採用難続く専門店、働きやすい環境作り

2016/09/12 06:30 更新


 繊研新聞社が行った全国専門店アンケート調査によると、今春は採用凍結も含めて採用数が前年より減った企業が、採用を増やした企業を久々に上回った。出店抑制の影響が出ているほか、採用時期の変更による混乱で計画数を確保できなかった企業も目立つ。

  来春新卒予定者の採用では、応募が増えた企業は2割と少なく、採用難の状況が続いている。アルバイトの平均時給は944円と高止まりの状態で、バイトやパート、結婚退職者の短時間勤務での社員への登用など、人員確保のための施策の多様化が進んでいるようだ。

 


応募は減少傾向

 専門店の従業員の採用数(有効回答企業108社)は、今春は、昨春に比べ「増えた」31%、「変わらない」36%、「減った」27%、「凍結した」6%だった。「減った」「凍結」の合計は4年連続の増加で、全体の3分の1に達し、東日本大震災以降で初めて「増えた」を上回った。一方で増えた企業も3割を占め、採用意欲は高くても、人員不足を理由に出店を抑えたり、計画未達で結果的に減った企業もあり、業界全体に人材不足の状況が続いているようだ。

 業績不振による採用凍結や、採用が減った企業が多いのはメンズやヤングレディス、SPA(製造小売業)のカジュアル系とミセス専門店。一方、採用が増加した企業では、事業領域や採用範囲の拡大、知名度向上、高卒採用の強化などが理由に挙がった。

採用数と応募数

 

 今春の採用で必要な人数を確保できたか(有効回答企業92社)については、「100%以上」58%、「80~98%」29%、「70%以下」13%だった。約4割が計画を下回る中、「辞退者の増加を想定して内定を多めに出し、前年並みを確保した」企業もある。応募が増えた理由は「説明会の開催の増加」「福利厚生の水準の高さが学生に浸透した」などの記入があった。

 17年春新卒者の応募状況(有効回答企業92社)は、昨年に比べて「増えている」18社、「変わらない」45社、「減った」29社。減ったが約3割、増えたが2割と、人材難の状況が続いている。減った理由は「大手の採用時期の変更で他業界と採用時期が重なり、応募者が減り、内定辞退者が増えた」「他業界や他社との競合激化」「業界離れ」などの回答があった。


辞めない職場づくり

 正社員の採用難を受け、アルバイトの時給は高止まり傾向を示している。パート、アルバイトの時給は105社が回答し、「上げた」63社(60%)、「変わらない」42社(40%)で、「下げた」は前年に続き0だった。時給の平均は944円(前年は946円)となり、過去最高だった前年とほぼ同じ水準を維持している。

 人手不足のなか、良い人材を確保するための施策(複数回答)を聞いたところ、上位は「各自の能力を高めるための支援や教育体制の強化」49社、「時短勤務、地域社員制度など多様な人材が働きやすい環境づくり」39社、「専門学校や大学などとの連携」29社、「学生アルバイトから正社員への登用」28社となった。

 賃金や福利厚生の改善より、教育体制の整備と、育児支援や多様な生活スタイルに応じた勤務体系作りを挙げる企業が増加。短時間勤務を前提に結婚退職者の再雇用、パートやバイトからの社員への登用などの回答もあった。学内説明会への積極的な参加、インターンシップ(就業体験)の受け入れ拡大など、学校との結び付きを強める動きも目立つ。

 人材を定着させるための施策(複数回答)でも、「産休・育休、短時間勤務制度など、働きやすい環境づくり」が最多の59社だった。次に多かったのは「評価システムや報奨制度の導入」50社で、ほかに「休みが取れる職場環境づくり」「教育の強化」「企業理念の共有」などの回答があった。働きやすく、成長でき、やりがいをもてる〝人が辞めない職場づくり〟で、採用難に対応する動きが強まりそうだ。

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