「岐阜の工場にはオーダーを出さない」――ある有名ドメスティックブランドがそう言っていると聞いた。そのブランドの服を縫っていた下請け企業が技能実習生を違法に働かせていたというニュースが出てしばらく後のことだった。
岐阜の縫製業のイメージは、全国的に見ても決して良いものではない。実際、実習生に「労基法の範囲を超える長時間労働をさせてきた」という声は取材の中で何度も聞いてきた。
数年前には、大手レディスブランドが違法労働をさせている工場で服を作っていたと報道があったが、その工場も岐阜だった。技能実習法施行後、違法工場は大幅に減ったが、オーダーを出したくないという声が上がるのは、相応の過去があるからだ。
一方で、技能実習制度から脱却しようと、真剣に物作りと向き合っている縫製業が岐阜に多数あるのも事実だ。例えば日本人技術者を育成するため、岐阜県既製服縫製工業組合が音頭を取って物作りの講座を開くと、多くの縫製業者が参加する。皆、良い物作りのために必死だ。
いつか「岐阜の工場にオーダーを出したい」と言われるために。
(森)