《視点》ミスリード

2018/12/20 06:23 更新


 ある「元」縫製業経営者は我が目を疑ったという。11月に開かれた「外国人労働者野党合同ヒアリング」だ。かつて居た実習生が「長時間労働を強制させられていた」と国会で切実に訴えているのをテレビ越しに見た。

 元経営者に聞くと事実は少々違った。深夜労働は本人の強い希望だった。割増し賃金の支払いが難しいので断っていたが、「稼ぎたい」と懇願され続けた。

 最終的に「残業は強制ではない」旨の念書を書いてもらい残業を許してしまった。しばらくして労働組合に駆け込まれ、多額の未払金を要求された。本人の同意があっても、「労基法違反は問題」と労基署から言われたという。その後会社は倒産した。言うまでもなく法令違反は駄目だ。だが後味は悪い。

 メディアが連日報道する実習生問題では「時給300円」「奴隷労働」と過激な見出しが並ぶ。搾取する企業、弱者の実習生と手を差し伸べる労働組合。この構図がほとんどだ。

 だがそれが全て真実なのか。ミスリードを起こしていないか。記者の基本を改めて考えさせられた。

(森)



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