東コレ17年秋冬 パワフルなメンズブランド

2017/03/29 06:30 更新


 やっぱり東京はメンズブランドが面白い。ファッションウィーク最終日の25日は、トーキョー・ファッション・アワード選出ブランドや過去の受賞ブランドを中心にメンズの発表が重なり、競い合うようなパワフルな1日になった。

(五十君花実)

 サルバム(藤田哲平)は「東京での最後のランウェーショー」と宣言してのコレクション。1月に伊フィレンツェのピッティ・イマジネ・ウォモに招待されて見せた内容に、ネクタイなどのアレンジを加えて変化させている。勢いにまかせてミシンを走らせたようなステッチワークや、ほつれた裏地が飛び出すディテールはそのままだが、色使いや素材選びを含めてややドラマチックな印象だった前シーズンに比べると、今季は肩の力が抜けてよりカジュアルなイメージになった。量感フォルムのレイヤードが軸になるが、デコルテがあらわになるような抜け感もあって重さはない。アクセサリー代わりに首や足首に巻きつけた長いシューレースも、揺れて軽さにつながる。前シーズン強烈に感じた、いらだちやヒリヒリするような焦燥はぐっと薄まった。ブランドとして一歩ずつステップアップし、今春には「LVMHヤングファッションデザイナープライズ」17年版のセミファイナリストにも選出。余裕が出てきたことが、クリエイションの幅の広がりにつながっている感触がある。同時に、あのグラグラ心を揺さぶられるようだった焦燥も、ちょっとまぶしい。

サルバム

サルバム


サルバム

 13年春夏にスタートしたターク(森川拓野)が、初のショーを行った。渋谷ヒカリエのホールをつなぐ廊下を、様々な個性の男女のモデルが歩いてくる。立ち上げ時からニードルパンチや刺繍を強みにしてきたが、今季はそうしたギミックに寄り過ぎることなく、純粋に「楽しい」「着てみたい」と思わせるバランスに落とし込んでいるところがいい。モッズコートは背面に紋章のビーズ刺繍が載り、スーツはニードルパンチによって、肩や腰にチェック柄が浮かぶ。サーマルを拡大したようなワッフル生地のプルオーバーやブルゾン、スカーフ調プリントのドレスやシャツもチャーミング。レディスは、OLさんが会社にも着ていけそうなアイテムもあって好感。

ターク

ターク

 海外有力店からの注目も高いダブレット(井野将之)は、過剰なほどに重ねた刺繍や、思わず笑ってしまうパロディーなど、ブランドの持ち味を存分に感じさせるショーを見せた。古着リメイク風に様々な刺繍モチーフを切り替えたTシャツやスウェットに、スカジャン調刺繍のライダーズジャケットやベロアのジャージー。そうした遊び心満載なデザインを、老若男女様々なモデルが着こなす。汗をかいたように肌がテカテカに光ったマッチョな男性がピチピチのTシャツを着て、メンズサイズのスラックスは小柄な女性がサロペット代わりにする。着る人の個性と服とのマッチングが楽しく、演出を含めてパワフルなショー。

ダブレット

 先シーズン、ショーデビューしたベッドフォード(山岸慎平)は、大人の男の色気を感じさせるエレガントなスタイル。ジャケットは背面のベンツに生地がたまってラッフルのように流れ、テーラードコートは片サイドにだけギャザーを寄せて動きを作る。クラッシュベルベットの光沢や、袖口に巻きつけたリボンのディテール、目の覚めるような赤や黄の色使いがドラマチックな伊達男といったイメージだが、ほつれた裾やわざと目立たせたようなステッチ、アシンメトリーなバランス感にはきめ過ぎない抜け感があって、街にもなじむ軽さがある。

ベッドフォード

 エトセンス(橋本唯)は、〝時間のズレ〟をテーマに、パネルのような布の重なりや、ゆがんだようなフォルムをポイントにした。テーラードジャケットやショールカラーのジャケットを何枚か重ね着しているように見せたり、ジャケットのラペルをひっぱって、無理やりサイドでボタン留めしたようなデザインがあったり。えんじやパープル、オレンジベージュなどのきれいなカラーパレットは、このブランドならではだ。ものすごく目新しいというわけではないが、クリーンでブランドの個性がうまく生きている。

エトセンス

(写真=加茂ヒロユキ、大原広和)




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