東コレ17年秋冬 アットトウキョウが始動

2017/03/23 06:30 更新


 人気ブランドが海外に発表の場を移し、ここ数年はややパワーダウンの傾向にあると言われてきた東京のファッションウィークだが、今季は変化を感じる。メインスポンサーとなったアマゾンジャパンの企画を中心に、消費者やインフルエンサーの巻き込みが少しずつ広がり、ウィークの認知向上やイメージアップにつながりそうなムードがある。

(五十君花実)

 今シーズンから、アマゾンジャパンによるウィークのサポートプログラム、「アットトウキョウ」が始動した。これまでウィークに参加してこなかったブランドを呼び込み、華やかなパーティーなども連動してウィークを盛り上げる企画だ。

 同時に、アマゾンのECサイト上でも、アットトウキョウ参加ブランドの17年春夏商品や、デザイナーのインタビュー動画、アマゾンで取り扱いのあるデザイナーお気に入りの書籍、日用品などを紹介している。


 東京を代表するファッションアイコン、DJのマドモアゼルユリアが手掛けるグローイングペインズが、アットトウキョウの中でブランド初のショーをした。

 会場は渋谷・道玄坂にあるクラブの駐車場。赤いライトが輝き、ジャングルの風景が映し出された怪しい空間を、ミリタリーにナース服といったサブカルチャー的要素を盛り込んだスタイルの男女が歩いてくる。フロントローにはデザイナーと親交のある秋元梢や奈良裕也らのファッションアイコンが集結し、ショー後に地下のクラブで行ったパーティーにもファショニスタがつめかけた。

 ここ数年、東京のファッションウィークがあまり発揮できていなかった、華やかなお祭りムードがつまったイベントとなった。

グローイングペインズ

 下中美穂子が手掛けるハウスコミューン(バロックジャパンリミテッド)も、アットトウキョウで初のショーをした。

 会場は虎ノ門のホテル、アンダーズ東京。大人の女性のためのエフォートレススタイルを提案するブランドとして、思わず触ってみたくなるような上質素材を使ったシンプルなデザインを揃えた。サイドスリットから布が揺れるロングドレスとワイドパンツのレイヤードに、ふわふわの毛足のブルゾンとキャミソールのコーディネート。フード付きプルオーバー、ニットのロングドレスといった日常着からウエストをきゅっと絞ったスーツまで、女性の様々なシーンに対応する。

 会場にはモード誌の編集長がズラリと並び、ショー後にデザイナーを囲む。東京コレクションではなかなか見られない光景だ。スタイリングは亘つぐみが手掛けた。

ハウスコミューン

 21日の夜には、アンダーズ東京でアマゾンファッション主催のパーティーも開かれた。音楽を中心としたライブストリーミングチャンネルの「ドミューン」と組み、インフルエンサーが来場。有力女性誌、男性誌の編集長も集結した。

 東京コレクションには雑誌編集者がなかなか来場せず、それが求心力の弱さの要因の一つと長年言われてきたが、どうやらアマゾンはそうした状況にテコ入れしているようだ。コミュニケーションの円滑化のためにラグジュアリーブランドで経験のある人材も登用し、アマゾンファッションや、ファッションウィークのブランディングを進めている印象を受けた。

 ネーム.(清水則之)は、ブランドらしいボリュームフォルムのスーパーレイヤードスタイルがさえている。誰もがよく知るアイテムなのに、どこか普通とは違って、なんだか不思議。そんな風に感じさせる服作りがこのブランドの魅力だ。

 ムートンブルゾンにトッグルコート、タックパンツ。文字にするとなんてことはないが、肩の落ちるフォルムや、ハイウエストで布がなびくようなボリュームが新鮮に映る。肩の縫い代が外に出てしまったような仕立てや、様々なグラフィックをコラージュしたプリントも面白い。ムートンベストの上にシャツを着て、ロングニットの上にカットソートップを重ねるといった自由なレイヤードと、それによって袖口からちらりと見える配色などの要素もきいている。

ネーム.


ネーム.

 まとふ(堀畑裕之、関口真希子)は、日本の美意識の一つ、〝いき〟をテーマにした。

 長着を軸にしたレイヤードスタイルはいつも通りだが、今季はそこにややシャープな感覚が入っていて抜け感がある。この抜け感こそ、まさにいきということなのかもしれない。切り替えでウエストを絞ったネイビーのレザージャケットに、スリムなレザーパンツ。それらを、いきを象徴するという縞柄のカシュクールジャケットや、風でたなびくビッグサイズのコートに合わせる。ダークトーンのコートがひるがえった時にだけ、ちらっと裏地のプリントが見えるのも、いきにつながる。

 顧客が安心して着られるアイテムを揃えつつ、真っ赤なガウンとネイビーのシャツ、レザーパンツといった反骨や挑戦を感じさせるスタイルもあって、これまでのマチュアなイメージが少し薄まった。

まとふ

(写真=加茂ヒロユキ)




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