東京ブランドの25年春夏向けは、テーラードスタイルの新しい解釈が目を引いた。マスキュリンなジャケットは、女性らしい体のラインを捉えたカットによって柔らかなニュアンスが加わった。クラシックを肩の力が抜けたバランスにする工夫が凝らされた。
(須田渉美)
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今シーズンは特に、シルエットを作りやすい素材にも重きが置かれている。
「エムティーモデリスト」はこの数シーズン、評判の良かったシルク使いのテーラードスタイルを掘り下げた。国内産地で作ってもらったのは、シルク100%のクレープデシン、三重織といった細密な生地。張りと落ち感を合わせ持つ風合いを生かし、緩やかなシェイプのジャケットを提案する。サイドを切り替え、フロントにダーツを入れているが、シームの存在を感じさせず、ドレープが映える。アームホールに入れたスリットでモダンなアクセントを利かせた。
ニューヨークを拠点にする大丸隆平が手掛ける「オーバーコート」は、強みのテーラーリングを軸にウィメンズ専用のラインを作った。前シーズンまではユニセックスでサイズの幅を出していたが、女性の体に合った形に向き合った。フレアシルエットのトラウザーは、ヒップの上をすっきりと見せ、クリースでシャープな線を出す。新鮮さを感じさせるのは、ベルテッド仕様のテーラードジャケット。メンズライクな作りを残し、しなやかなウールを生かしてふんわりしたフォルムへと発展させた。単純なオーバーサイズの量感とは異なり、ベルトを締めると膨らみのあるシルエットで優しさを感じる。フロントを開けて羽織る着こなしもきれいで軽やか。