東京ブランドの17~18年秋冬物では、個性や持ち味を従来以上にはっきりと打ち出したブランドがバイヤーの注目を集めている。単なるトレンドの後追い品なら、安価なファストファッションやSPA(製造小売業)ブランドで簡単に手に入る時代。デザイナーブランドならではのひねりやこなしが求められている。
(五十君花実)
■アキラ・ナカ 無国籍なエレガンス
アジアや中東、東欧など、どこかエスニックな匂いを漂わせつつ、どことも断定できない――。そんな浮遊感を、モダンでエレガントなスタイルに閉じ込めた。
エキゾチックなタペストリー風の模様をプリントしたストレートラインのドレスに、深いスリットから凝ったレースがのぞくベルベットドレス。トレンドのグレンチェックのダブルブレストジャケットやコートは、クラシカルチェックにピンクやグリーンを差して新鮮に見せる。従来より更に強いデザインに振っているが、バイヤーも強いデザインを求めているという。
「どこの文脈にも属さない服が作りたい。日本人にしか出せないエレガンスがあるはず」というナカの言葉に、来季から開始予定というパリ展への意気込みがにじむ。今季からジュエリーラインも開始した。
「アキラ・ナカ」ドレス8万9000円
■アカネ・ウツノミヤ 挑戦的なブリティッシュ
英国調チェックのスーツ、ノルディック柄のニットベストやセーターといった、懐かしさを感じさせるアイテムを取り入れながら、単なるレトロ趣味では終わらせず、挑戦的でモダンな感覚に落とし込んでいる。
ツイードタッチのタイトミニスカートは、サイドに入れた大胆なカットから太ももがのぞき、ダブルフロントのクラシカルなベルテッドコートは、アイスブルーのフェイクファーで作る。デッドストックを文字通り掘り起こしたという樹脂製のベルトバックルや、オブジェを思わせる造形のボタン類、コッパーメタルの副資材も、モダンな感覚につながる。
ブリティッシュは秋冬の本命トレンドだが、このブランドにしかないこなし方になっているところが楽しい。
「アカネ・ウツノミヤ」ジャケット5万8000円、ブラウス4万8000円、スカート3万8000円
■タロウ・ホリウチ フューチャー×クラシカル
プレフォールに続き、持ち味であるフューチャーリスティックなムードを、クラシカルなフェミニンスタイルにミックスしている。
千鳥格子柄のウールはボンディングで張りを出し、丸く立体的なフォルムを描くコートやジャケットに仕立て、セーターはキラキラ光るナイロンフィルムの糸でできている。ダイヤ柄を刺繍したチュールのドレスに、PVC素材を重ねたスカート、フェイクレザーのスリムパンツやプリーツスカートなど、様々な光沢や透け感も未来的な感覚につながる。
宇宙飛行士のモチーフが付いたネックレスやネックウォーマー、UFOの形をイメージしたハットなど、雑貨も遊び心いっぱい。
「タロウ・ホリウチ」ビッグフォルムコート9万8000円、ワイドパンツ3万8000円、ネックウォーマー(黒)1万円、ロングネックウォーマー(白)1万8000円
■凝ったディテールで華やかに ミュベール
着想源はフランス王妃のマリー・アントワネット。モッズコートやスタジアムジャンパー、ラガーシャツといったカジュアルアイテムに、王妃の豪華な衣装を思わせる凝ったディテールを盛り込んで、ブランドらしい華やかなバランスに落とし込んでいる。
刺繍などのテクニックはもともとの強みだが、折ったスパンコールを刺繍することで立体的なペーズリー模様を描いたり、レースのはめ込みによって可愛らしい動物のモチーフをかたどったりと、より手の込んだ表現になっている点がポイント。一方で、シンプルなパンツなども揃え、トータルコーディネートで提案できるようにした。
「ミュベール」ブラウス4万8000円、フィルムタフタスカート4万2000円、チュールプリーツドレス4万8000円
■サカヨリ ボクシングブランドと協業
デザイナーの坂寄順子がボクシング観戦が好きということで、ボクシングブランド「rscプロダクツ」との協業商品を企画した。スポーツシーンで使えるベンチレーション機能付きのフードパーカやスポーツタイツ、プリントTシャツなどがある。
併せて、サカヨリの通常ラインでもボクシングを着想源にした。といってもカジュアル一辺倒ではなく、サカヨリらしいパターンテクニックを生かしたエレガントなアイテムを作っている。ボクシンググローブを思わせる編み上げディテールをポイントにしたストライプ柄のトップやドレス、ボクサーがはいているフリンジ付きのショーツから着想したというカラフルなフリンジのドレスなど。
「サカヨリ」コート7万2000円、パーカ2万7000円、フリンジドレス4万6000円、ファーティペット2万6000円
■エンフォルド スカートのバリエーション
シルエットのきれいなパンツがブランドの代名詞となっているが、今季はスカートを増やしている。膨れジャカードやキルティング、チェック柄、ニット地など、素材のバリエーションを充実するとともに、フレアラインやストレート、アシンメトリーなど、シルエットも豊富に企画し、パンツとともに売り上げの軸にする。
毎年立ち上がりから好調なウールコートも引き続き推している。併せて、ダウンコートやキルティングコートなど、旬なアウターも揃えた。チェック柄の切り替えドレスなど、凝ったデザインも企画しつつ、ベースとなるのは大人女性が安心して着られるシンプルなアイテム。そんなMDのさじ加減がうまい。
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