「ベイクド・バイ・メリッサ」――とびきり小さなカップケーキで次々と店を増やしている、急成長中のカップケーキ専門店チェーンだ。09年、ソーホーに最初にオープンした店は仮設店舗のようなつくりで、カウンターの中に人が1人やっと入れるくらい。これ以上狭い店はないのではないかというようなちっちゃな店だった。店も商品も「極小」でスタートしたが、今や雨後の筍のごとく、マンハッタンのあちこちに店舗が広がっている。
ガラス張りでストリートから中が良く見える。
白を基調としたクリーンな内装に、カラフルなカップケーキやトレードマークが映える
ニューヨーカーは元々、カップケーキ好きの文化をもつといっても過言ではない。幼稚園や小学校では子供の誕生日を教室でお祝いすることが多く、そのときに親がクラスメートの人数分持参するお菓子の定番がカップケーキだ。小さい頃から慣れ親しみ、楽しい思い出を呼び起こす代表的なお菓子なのである。
一方で、ニューヨークのカップケーキといえば、かの人気テレビドラマで映画化もされた「セックス&ザ・シティー」で有名になったマグノリアベーカリーを思い起こす人も多いだろう。ウエストビレッジのマグノリアベーカリーの前に深夜、男性さえ行列をつくっていたのを見たこともある。
しかし、ベイクド・バイ・メリッサのような小さなカップケーキをつくった店はなかったのではないだろうか。今や、一口サイズのカップケーキの代名詞のようになった感さえあるベイクド・バイ・メリッサ。
人気の秘密は、カラフルで可愛いこと、甘ったるいけれども小さいのでダイエット中でも罪の意識少なく口にできること、アートのようないろいろなデザインを少しずつ楽しめること、毎月新しいカップケーキが登場すること、ちょっとした手土産として重宝することなどだ。3個で3ドル、6個で5ドル50セント、12個で10ドルと、セット買いのみに限った売り方も賢い。
陳列棚のカップケーキ。 小さなアートの世界ともいえる、さまざまなデザインのカップケーキは見るだけでも楽しい
顧客とコミュニティーをつくっていることも、人気の要因だろう。100個以上なら、自分でオリジナルのカップケーキをデザインすることができる。デザインしたカップケーキはベイクド・バイ・メリッサのウエブサイトの「カップケーキギャラリー」に作者の名前と共に掲載される。その数はすでに7万を超えている。それをフェイスブックなどのソーシャルネットワークでシェアし、友達に披露する楽しみもある。
マンハッタンのショップは10軒以上になり、ジョン・F・ケネディ空港やニュージャージーのモールにも出店。国内なら郵送も受け付けている。どの店も常にお客が入っていて、人気は当分続きそうだ。
3つのカップケーキ。 現在の売れ筋。これで3ドル
89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッションビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダムに紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ)