スノーピーク流“熱狂”の作り方

2016/08/27 11:14 更新


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《販売最前線》キャンプイベントで全国巡回

社員と寝食共、絆育む

 キャンプ用品メーカーのスノーピークは、ユーザーと寝食を共にするキャンプイベント「スノーピークウェイ」を1998年から開催し、客との絆を強めている。部長以上の会社幹部全員が参加するイベントで、ユーザーからのクレーム・提案を直接聞く場としても役立てている。ブランドにとって、商品を長く愛してくれる顧客を作り続けることは永遠のテーマ。〝スノーピーカー〟と呼ばれる熱狂的なファンを持つ同社から、顧客との向き合い方を学ぶ。(杉江潤平)


直言歓迎、改善のヒントつかむ

 6月18、19日。岐阜県高山市の無印良品南乗鞍キャンプ場を貸し切り、今年4回目となるスノーピークウェイが開かれた。参加したのは、抽選で選ばれたカード会員約70組(約200人)と、山井太社長や部長以上の幹部、中部地方の店長ら社員約25人。

 

7 キャンプ場を貸し切って開催される
キャンプ場を貸し切って開催される

 

 親子で楽しめるワークショップを複数催すなど、企画は充実しているが、スケジュールは適度にゆとりがある。会場内にはスノーピーク製品の物販コーナーも無い。あくまでゆっくりとキャンプと交流を楽しめるようにとの配慮からだ。3回目の参加という門谷圭さんは「キャンプ好きが集まるので良い。極めている人も多く、サイト作りの参考になる」と話す。

 

4 「親子で参加できる企画を増やして」との要望を受け、今年から編み物講習やパン作り講習、アウトドア朗読会など子どもも楽しめるイベントが増えた
「親子で参加できる企画を増やして」との要望を受け、今年から編み物講習やパン作り講習、アウトドア朗読会など子どもも楽しめるイベントが増えた

3 「親子で参加できる企画を増やして」との要望を受け、今年から編み物講習やパン作り講習、アウトドア朗読会など子どもも楽しめるイベントが増えた5 「親子で参加できる企画を増やして」との要望を受け、今年から編み物講習やパン作り講習、アウトドア朗読会など子どもも楽しめるイベントが増えた

 


たき火トーク

 恒例企画は、たき火を囲んで社員とユーザーが語り合う〝たき火トーク〟だ。アルコールの勢いも手伝い、ユーザーからは本音がこぼれる。「北陸にもストアを作ってほしい」「春にレストランのメニューが変わったが独自性が薄まったように感じる。飲食事業の方向性が見えない」など、手厳しい意見が相次いだ。

 

焚き火を囲んでユーザーと語らう山井社長(右)
焚き火を囲んでユーザーと語らう山井社長(右)

 

 耳の痛いクレームも目立つが、山井社長は「本社の社長室でシートを読むだけでは分からない、お客様の本音が聞ける」とユーザーからの直言を歓迎する。

 同社はこのイベントを「お客様とコミュニケーションをとるには最高の場」であるとともに、業務改善の機会と位置付ける。山井社長は「フェイス・ツー・フェイスで言われたら逃げられない。責任ある立場の者がここに来ているから、即断即決もできる。指摘された点は、来年の今日までに修正したい」と強調した。

 


延べ約3万人参加

 始めたのは経営不振に悩んでいた98年、何かのヒントを得ようと開催したところ、参加者のほぼ全員から「価格の高さ」と「品揃えの悪さ」を指摘された。そこで、問屋との取引をやめて中間流通費をカットするとともに、小売りの取引店舗を1商圏に1店に絞り込み、自社商品をある程度置けるところに限定した。その結果、価格は下がり、取扱店の品揃えが充実。ユーザーからの人気が再び上がり始め、今の成長路線を歩むことになった。

 以来、キャンプシーズンの春、夏、秋に全国10カ所程度で開催。これまでに延べ約140カ所2万7000人を集めている。山井社長は「我々はメーカーだがエンドユーザーともつながるコミュニティーブランド。19年続けることで客同士がつながり、その輪の中に友達の一人として加われていることがうれしい」と喜ぶ。

 

ユーザーに学ぶ

 ユーザーとの絆が強まれば、本音も聞ける。強固な関係性を生かした商品やイベントの改善事例は尽きない。例えば、折り畳み式のまな板を入れるメッシュのミニバッグ。当初メッシュ製は無かったが、「キャンプ場で洗って濡れたままでもすぐに入るように」との声を受けて新たに作られた。提案をした安井裕子さんは「折り畳みだが、実際に使うときは開いたまま固定できるようなったらもっと使いやすい」と、会場でさらに注文していた。応対したスノーピークの伊豆昭美さんは「私たち社員以上に商品のことを考えてくれている。『そんな風に使うんだ!』と学ぶことが多い」と話す。

 

6 ユーザーの声を取り入れて開発されたメッシュ製のまな板入れ
ユーザーの声を取り入れて開発されたメッシュ製のまな板入れ

 

 提案の精度が高ければ、商品や事業として形になる。自らの意見が採用されたユーザーからすると、ブランドの顧客ではなく、同社の事業に参加している感覚になる。当然、そのユーザーはもっとブランドを気にかけ、戦略に関与するようになり、どんどん熱いファンになるという構図が生まれる。

 

大きくなった悩み

 いいことずくめのスノーピークウェイだが、会社が急成長する中で、これまで見られたユーザーとの深いつながりを生みづらくなっているのは悩ましい。同社の売上高は毎年20~40%ペースで伸びており、昨年には東証一部上場を果たして知名度も格段に上昇。その結果、スノーピークウェイの参加倍率は各会場で2~3倍を超え、気軽に参加できるイベントではなくなりつつある。今回取材したなかでは、以前にも参加した人が目立ったが、今後は難しくなるだろう。

 開催頻度や開催場所を増やしたいところだが、部長以上の参加が同イベントの独自性につながっているため、「社員の私生活を考えると年10回が限界」(山井社長)。

 積極的にこうしたイベントに参加するユーザーは「私のブランド」「私が育てたブランド」との感覚を持つ人も多い。会社の規模を拡大しながら、ユーザーと親密な関係を保つことが今後の課題になる。

スノーピークウェイ ユーザーと社員の交流を目的としたキャンプイベント。全国のキャンプ場で年9~10回開催する。参加条件はポイントカード会員で、申し込んで抽選に当たった人。会場規模にもよるが、毎回200人前後が参加する。現在、日本以外にも韓国と台湾で開き、今年からは米国でも開催する。

8 スケジュールの最後に参加者全員で記念撮影をして終了
スケジュールの最後に参加者全員で記念撮影をして終了

(繊研 2016/07/05 日付 19505 号 8 面より)

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