「ラーメン1000円の壁」打破 1杯の価格は最低時給目安

2025/10/07 12:30 更新NEW!


訪日客でにぎわう「銀座篝本店」の鶏白湯Sobaは1800円(税込み)。約2年で600円の値上げ。トッピングなどを追加すると2000円を突破

 「ラーメン1000円の壁」が叫ばれて久しいが、昨今は、2000円の壁に向かう勢いにある。海外では3000円以上が珍しくなく、むしろ「国内が安すぎた」のだ。既成概念に縛られてきた反動が一気に起ころうとしている。

有名店は達成

 デニーズは今年1月、「日本一予約が取れない」と評される「飯田商店」監修の「味噌らぁ麺」(税込み1419円)を開発。2カ月間で想定より約5割増の30万食以上、類似通常メニューの約2倍を販売した(現在は販売終了)。その完成度は多くのメディアで称賛され、「お薦めセット」(2013円)は業界識者をうならせた。

 新横浜ラーメン博物館の広報担当・中野正博氏も「1000円の壁を神格化しているのは、500円程度の時代からフリークを続けてきた中高年層ではないか。800円程度から慣れ親しんでいる若年層は、あまり壁を感じていない」と指摘している。「ラーメン一杯の価格は最低時給が目安。東京なら1163円、全国なら1055円(25年4月取材時点)。有名店は軽く超えている」と説く。

 とはいえ、値上げが利益に直結するわけではない。個人店では食材原価が約5割、人件費が1割上昇しており、従来の利益を確保するには200円以上の客単価アップが必要だという。その即戦力が味卵・チャーシュー・替え玉だ。追加の定番であり「50円値上げしても注文は堅い」(都内有名店)と見込む。同時に「ドリンクやサイドを充実させ、杯数より客単価のアップで収益を図る工夫が必要」という。

付加価値の演出

 一方、値上げに見合う付加価値の演出も活発だ。ある業務用スープ製造は「値上げを納得させるには、濃厚かつ具だくさんが有望」と語り「産業給食やフードコートへの営業では辛口と肉増しの提案が決まりやすい」と明かす。

 付加価値に対する意識も変化している。外食ジャーナリストの亀高斉氏は「これまでは仕込みの努力や苦労が敬われ、一杯のストーリーが評価されてきたが、そうした情緒的な理屈をZ世代に押しつけるのは難しい。好みやコスパなど自己的かつ質実的な価値が支持される」と指摘。また「タイパ重視からテーブルチェックなどの予約課金には肯定的。時短の環境整備も重要」と展望する。

 「一風堂」など約290店を展開する力の源ホールディングスの河原成美社長は、かつて「おいしければ許されると思ったら大間違い。プラスお客の精神的満足を徹底的に追求すべき」と強調。ラーメンの国際化を率先し、いまや海外14カ国・地域の約140店で国内の4~5倍と目される客単価を実現している。

(日本食糧新聞社 岡安秀一)



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