ポリエステル使いを中心に心地良いライフスタイルウェアを提案する「PGG」(ピージージー、TSI)が、日本生まれのカットソーブランド「フィルメランジェ」(ビービーエーアソシエーション)と協業品を開発した。今春夏テーマ「石」を象徴する杢グレーの裏毛アイテムを求め、天然繊維の良さを生かすことに定評があるフィルメランジェと組んだ。合繊のPGGと天然繊維のフィルメランジェが協業した理由について、PGGディレクターの酒井昭征さんと、フィルメランジェでファブリックデザイナーを務める昼間直己さんに聞いた。
――協業の経緯は。
酒井 以前、フィルメランジェを「アンカットバウンド」(上野商会)のショップで見つけ、それ以来、ラギットで味のある柔らかい素材感にずっと引かれていました。得意の杢グレーでシーズンテーマの石を表現してもらえたらと思い、持ち掛けました。
昼間 ずっと天然繊維にこだわってブランドをやってきましたので、「ポリエステルで裏毛を」と依頼されたときは少し困惑しました。僕自身、外遊びをよくするので、ポリエステルの良さは知っていますが、ブランドの方向性もあります。そこで、天然繊維でポリエステルに近いものを作ることを提案したのです。
――具体的にどう折り合いを。
昼間 酒井さんからは「張り感」「白のクリアさ」「軽さ」「ドライ感」といったお題をもらい、それらを天然繊維でアプローチしてみました。裏毛は、表糸と中糸と裏糸の3種類で構成されているのですが、例えば裏にリネン100%の糸を使えば、張り感と清涼感を出せます。
酒井 こうした置き換えができることを知り、驚きました。均一な仕上がりになるポリエステルと違い、天然素材らしいランダム感や風合いが出て、コレクションでは異彩を放っています。服をよく知る人ほど評価が高いですね。
――苦労したことは。
酒井 縫製はPGG側が担ったのですが、通常使う合繊糸より綿糸は切れやすいため、縫いにくく、(生産管理の)担当者は困っていました。
昼間 フィルメランジェでは最終的に土にかえることを想定して物作りをしていますので、綿糸で縫うことは譲れませんでした。
――協業で得たことは。
昼間 求められたことに応えるのは、料理のようで楽しかったですね。通常のコラボは既存の生地やモデルを少しだけ変えるパターンが多く、今回のように特定ブランドのために素材を一から作ることはありません。
酒井 国内生産にこだわるフィルメランジェとの取り組みを通じ、後継者難や経営難で技術が途絶えてしまうという、繊維産業が直面する問題を改めて知りました。自分に何ができるか、クリエイションを続けるなかで模索していきたいです。
■協業製品は全4型。売れ筋であり、今回のコラボを象徴するセットアップ(写真、ジャケット税込み6万3800円、パンツ4万6200円)は表に綿、裏にリネンを使う。石の冷たさを表現するため、表糸には双糸を採用。杢をより細かく、きれいに見せた。このほか、Tシャツとワンピースがある。公式オンラインショップとギンザシックスにあるPGG直営店で販売している。