パルグループホールディングスの創業者、井上英隆さんが10月19日、91歳で亡くなった。73年に紳士服の仕立て屋から創業し、カジュアル小売店へと転換。SPA(製造小売業)化を推進するとともに、マーケットのトレンドを捉えるパルマップを独自に編み出し、多ブランド戦略によってパルを大きく成長させた。
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時代を見つめ、先を予測して判断するのは、経営者の大きな役割。井上さんはこうした点で、常に独自の視点や感性、嗅覚を持ち、取材で驚かされることも多かった。
SPAへの転換をはじめとした変革は容易ではなかったが、「しっかりと浸透させ、企業体質そのものが変わることが大切」と、辛抱強くコツコツと取り組んできた。こうした大変革を、幼虫がさなぎを経て成虫になる蛻変(ぜいへん)に例えていたのも印象的だった。
「出る杭は引き上げる」という社風があるように、若手を抜擢(ばってき)し、現場に権限を委譲することで数多くの人材を育ててきた。
社員を信じ、思い切って任せ、同じ目線で接しながら温かく見守る。こうして強い信頼関係を築き、多くの個性的なブランドを生み出した。アパレルだけでなく、94年に新しさや面白さが詰まった雑貨業態「スリーコインズ」も開発。どれも個性や発信力に優れ、現在の好業績に直結している。
13年には公益財団法人のパル井上財団を設立、代表理事として社会に貢献した。国内の大学や服飾系学校に在籍する学生に奨学金を支給するほか、学生が磨いた接客技術を競い合う「パル・ファウンデーション・カップ」を開催するなど、ファッション業界の発展にも尽力してきた。
24年には故郷の奈良県下市町で、廃校をリノベーションした複合型施設「キト・フォレスト・マーケット・シモイチ」が開業。孫である井上真央パルグループホールディングス取締役執行役員兼経営企画室長らが中心となって、地方創生の取り組みを広げるなど、井上英隆さんの思いをつないでいる。ご冥福をお祈りいたします。
(小畔能貴)
