尾州産地、のこぎり屋根再生プロジェクト第1弾完成 幅広い世代が集える場所へ

2025/10/31 11:30 更新NEW!


人々が集まれる縁側を道路側に作った

 尾州産地ののこぎり屋根工場を改修するプロジェクトの第1弾が完成した。繊維工場としては役目を終えたが、人々が集える場所として再活用される。愛知県一宮市出身の建築士、田代大賀さん主導によるもので、「幅広い世代が気軽に集まれるパブリックスペースになればうれしい」と話す。

(小坂麻里子)

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地元の風景を残したい

 田代さんは地元の風景を残したい思いから、学生時代からのこぎり屋根工場の改修をテーマにしてきた。尾州産地には稼働しているもの、そうでないものを含め多くが残る。「再生したのこぎり屋根工場を増やして街全体を巡れるようにしたい」と構想する。

 今回改修したのこぎり屋根工場は、オーナーの住居に隣接する形で61年(昭和36年)に建てられた。母屋は料理・ヨガ教室、元工場は音楽イベントなど様々な使われ方をしている点に田代さんは着目した。

 工場南の道路側に人々が集えるように、縁側を作った。改修にはストック木材や不用になった建具を活用。縁側から見ると古い扉が幾つも並び、かつての人々の生活が連想される。

 内部はのこぎり屋根上部の北窓からのふんわりした光と、縁側から入る直射日光で奥行きのある空間。ガラス窓を一つずつ区切ってギャラリーにした。

 骨組みはプロの大工に依頼し、縁側の床材や壁を貼る作業はセルフビルドで作り上げた。1年前から月2回ペースで改修に取り組み、「色々な人に助けられて完成した」と振り返る。

きものをアップサイクル

 ギャラリーの展示作品を担当したのは不用になった服をアップサイクルするユニット「MZNZラボラトリー」。素材は土地にゆかりのあるものを活用した。

 のこぎり屋根工場が稼働していた頃にカーテン地として織られた生地をランプシェードに、オーナーの家族が残したきものの半襟をパッチワークにし、一区切りごとに誰かの部屋をイメージして展示している。縁側に合わせ、和の要素を取り入れてきものの反物をアップサイクルした羽織りも飾る。

 「服も建物もこのような再活用の仕方がある、と見てもらえたらうれしい」と清水薫子デザイナーは話す。展示は11月3日まで、事前予約制。

ギャラリーの展示を担当した「MZNZラボラトリー」の清水さん。工場にゆかりのある生地を活用した


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