《めてみみ》幸せを感じる場所

2024/02/14 06:24 更新


 沖縄県西表島は21年夏、沖縄本島北部などと共に世界遺産に登録された。鹿児島県の屋久島や、秋田県から青森県に広がる白神山地などに続く日本で五つ目の自然遺産だ。広大なマングローブ林、イリオモテヤマネコをはじめとする希少な動物など、多様な生態系が評価された。自然遺産としては日本で最後の登録になる見通しだ。

 日本のほぼ西南端という地理的な条件、直接戦禍が及ばなかったことが自然環境の保護の点で幸いした。観光客も少なくはないが、大半はフェリーで約40分の石垣島を拠点にして、西表島は日帰りツアー中心である点も環境保全につながった。

 石垣島行きの最終フェリーが夕方に出ると、西表島の生活は一気に静かになる。可愛らしいスーパーはあるが、コンビニは無い。週末に誰かが石垣島のマクドナルドに行くと聞けば、それだけで話が盛り上がるという。

 世界遺産の認定や大手リゾートホテルの進出、インバウンド(訪日外国人)復活などもあり、今後は多少にぎやかになりそうだが、島の人にとってはうれしさばかりではない。知人の一人は「便利にならなくていい。コンビニやマクドに行くだけで幸せを感じられる場所ってそう無いでしょう」。効率や便利さが強調されるなか、利便性が何をもたらし、何を失わせたのか、少し立ち止まって考えても良いのかもしれない。



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