《めてみみ》街のハブ

2020/01/17 06:24 更新


 「中学校の女子生徒の制服を提供してほしい」。そんなSNSのメッセージを受け取ったのは、昨年の台風19号の直後。水害を受けた長野の店のバイヤーからだった。その後、メッセージは拡散され、中学校のOBや先生から段ボールいっぱい制服が集まったと報告があった。

 被害にあった街でファッションの小売業として何ができるのか。そのバイヤーのSNSはこの後、葛藤しながらも同じ街に生きる人々で一緒に前を向いていこうという姿勢にあふれていた。昨秋は台風被害の影響もあって、人々が消費を楽しむムードは例年よりもずいぶん冷え込んだ。ましてや被害にあった街で、ファッションを楽しむことなどなかなかできなかっただろう。

 12月になって、明るい知らせがあった。このバイヤーの勤めるショップ「ガーデンパーティ」が中心となって、チャリティーマーケットを開催するもの。台風19号の復興活動の支援資金として売り上げを全額寄付するという。取引のあるデザイナーや交友のあるスタイリスト、ライターらが、ファッションアイテムを寄付して盛況だったようだ。被災地の人々にも少しだけファッションを楽しむ余裕が生まれつつある。

 ECの広がりとともに、実店舗が縮小しているのは世界中の現実ではあるが、店は街の人々を勇気づけるハブとしての役割も果たせる。



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