奈良の取材時、昼食にしばしば立ち寄るのが「ふたかみパーク當麻」という道の駅。大阪と奈良の県境に位置する二上山のふもとで、窓からは大和盆地が一望できる。右手が飛鳥時代の都の場所だとか、あれが大和三山の畝傍山と、しばし歴史散歩にふける。
戦国時代の奈良は、どことなくイメージが薄い。筒井順慶、松永久秀など名を知られる武将はいるのだが、今一つマイナーだ。一説では、中世以来の寺社勢力が強かったことに加え、地域ごとに有力な荘園領主が並び立ち、有力大名が育ちにくかったらしい。
時代が下り、奈良の靴下産地は、産地ブランド「ザ・ペア」の育成中だ。「奈良の靴下メーカーの社長さんは個性が強い人が多い。意見をまとめるのは難しい」との声もあるが、少しずつ存在感を高めている。往時に比べ規模は縮小したとはいえ、婦人やスポーツなど得意分野で健闘する中堅メーカーが意外に多い。編み機で数十台から100台前後。大きくもなく小さくもない。そこかしこに有力領主がいるイメージだ。
産地ブランドなどで共同戦線を張れる部分は張り、消費者・流通・行政などへアピールを強めていく。同時に一国一城の主として独自の技を磨く。経営環境が厳しさを増すなか、本当の戦国時代はまだこれから。戦いの内容も大きく変わってくることに違いない。