江戸時代、飛脚は別名「十七屋」と呼ばれた。十五夜の2日後の十七夜を「立待月(たちまちづき)」と言うが、飛脚に手紙を託せば、たちまちに着くという駄じゃれで付けられたらしい。「はやり風邪、十七屋からひきはじめ」など、川柳にも数多く読まれている。
時代を経て、電子メールが開発されたのが71年のこと。最初は隣り合う二つのパソコン間で送受信したようだ。一気に普及したのはウインドウズ95が世に出た90年代半ば。以来、ビジネスのスピード、仕事のスタイルが大きく変わった。
はや師走。昔は手帳を繰りながら、あいさつ回りの予定を入れたものだが、この20年はそうした習慣もほとんど無くなった。メール、LINEなどで済ませがちだ。便利な半面、フェイス・ツー・フェイスの会話はどうしても希薄になる。進歩を頭で理解しつつも、「何だかなあ」という思いがぬぐえない。年を重ねるごとにその思いは強くなる。
情報伝達のスピードが尊ばれ、商売の大きな武器になるということは、古今東西で共通する。昨今の技術発展を見ていると、そのうち現代人が思いも付かないコミュニケーションツールも世に出てくるのだろう。とはいえ、あくまでツールはツール。手段であって目的ではないと自らに言い聞かせながら、今日もたまったメールに返事を出す。