「呉服商の蔵に眠るアンティークのきもの生地を再生したい」。松本商店(東京、松本俊一社長)は、アップサイクル雑貨「室町呉袋」やアパレル製品用に加工した生地を販売している。
呉服問屋の在庫に着目
松本商店は大手寝具企業出身の代表者が立ち上げたインテリア生地の会社。全国の繊維産地と協業で物作りし、販売している。この中で出会ったのが呉服だった。一点用に13メートルの反物になっている。
呉服の中心地、京都室町地区の呉服問屋には「数十年にわたって積み上げた呉服の在庫が多数あり、70年代のものもある。しかし呉服市場が大幅に縮小し、販売先を失った呉服が使い道のないまま眠っている。シルクという特徴から黄変など変色した生地も少なくない」(松本社長)。
シルクのほか、大島紬や結城紬、黄八丈など高級品向けが多い。産地の職人芸を駆使した織り柄や染色加工の希少な一点物もある。ウールや綿もある。冠婚葬祭などフォーマルな装いに対応する黒生地は「色落ちなど染料の問題があってそのままでは使えないケースが多い」。
国産ならではの価値
そこで、柄物などを中心にトートバッグやショルダーバッグ、ポーチやペンケースなどの服飾小物を企画した。自社ウェブサイトで販売するほかBtoB(企業間取引)用途にも紹介している。
黒生地などの無地は、加工設備を持つ丹後織物工業組合と連携して精錬・漂白加工を行い、白生地にして販売をスタートした。このほどテキスタイルメーカーの中伝毛織と縫製のサンテイが東京で開いた合同展に参加し、紹介した。協業でブラウスも製作。京都の墨流し技法でプリントしたシルク生地をサンテイが縫製した。
「国内産地や問屋などには国産ならではの付加価値を発信できる生地が多数存在する。呉服もその一つで、今後も呉服のアパレル用途への生地リサイクルや製品としてのアップサイクルによって再生事業を進めたい」としている。