京都市内から1時間半近く自動車に乗って到着したのは緑に調和する荘厳な空間。滋賀県信楽にあるミホ・ミュージアムで、「ルイ・ヴィトン」は18年クルーズコレクションを開催した。I.M.ペイ氏が、ヒマラヤの秘密の谷にある地上の桃源郷をイメージして設計した建物だ。ミュージアムへと続く長いトンネルと橋がランウェーとなった。
クルーズコレクションは、「日本の各地に見られる都会と自然の融合」からイメージを広げた。ジャポニズムを取り入れながら、どこか未来的な雰囲気も漂うモダンスタイル。コーデュロイとレパードを切り替えたミニドレスやジャケット、トラックパンツとコーデュロイジャケットのコーディネートなど、ニコラ・ジェスキエールらしいミニマルな中に収めた細かな装飾が目立つ。
そこに変化をつけるのは、箔(はく)プリントをのせた松の柄や浮世絵のようなプリント柄。スパンコールドレスには、だるまや武士の柄がのせられる。能の舞台を思わせる黄金色のイブニングドレスや甲冑(かっちゅう)のようなレザーのキャップスリーブをつけたトップもある。バッグやクラッチには歌舞伎のお面のモチーフがあしらわれた。
ドレスやスカートは、スクエアな布がフロントでバイアスに揺れるディテールが特徴。その布使いにもどこか和を感じることができる。
クルーズコレクションは、山本寛斎にも敬意を表している。同氏のデザインしたアイコンやシンボル、キャラクターがルイ・ヴィトンのバッグやアクセサリーにあしらわれている。(小笠原拓郎)



