《服を売ろう》日本流MD、世界へ

2016/11/03 09:57 更新


ロンドンのネット小売り「LN‐CC」バイヤー  飯泉さん

直観と理論組み合わせ

 

 「競合する世界トップクラスのネット小売り企業は、買い付け額も品揃えの幅も、有力百貨店のような規模になっている。そことの差別化は、バイヤーの個性をどう見せるか、まだ世に出ていないブランドをいかに揃えるかにかかっている」と話すのは、ロンドンのネット小売り、「LN‐CC」でメンズバイヤーとして働く飯泉太浩さん。「他店にまだ知られていない日本のブランドが探しやすい点が僕の強み。日本人だからこそ紹介できるブランドや商品を見せていきたい」という。

 海外で活躍する日本人デザイナーやパタンナーは少なくないが、バイヤーはそう多くない。飯泉さんは異色の経歴だ。もとは、ヤング向けSPA(製造小売業)を経て、「エストネーション」「アクアガール」にレディスのバイヤーとして勤務。12年に中国・上海の「ディエチ・コルソコモ」の立ち上げに参加し、その後レディスだけでなくメンズも担当するようになった。LN‐CCに移ったのは16年6月だ。

 

 

最終消化率85%

 英語や中国語が最初から堪能だったわけではない。それでも、「コルソコモがやるべきことを資料にまとめてプレゼンテーションしたら、オーナーのカルラ・ソッツァーニ氏が『彼を雇うべき』と言ってくれた」というように、熱意と努力でチャンスをつかんできた。コルソコモでは、当初はチームと意思の疎通が全く取れず苦労したというが、最終的には、「セールを含む消化率85%」という結果をたたき出した。

 メンズ主力のLN‐CCは、英百貨店セルフリッジ出身のジョン・スケルトンが10年に立ち上げ、現在は伊のネット小売り、レベルグループ傘下にある。ロンドンに実店舗も持つが、売り上げの80%をECが占め、地域別では欧州と米国が各20%、アジアが15%。残りが他地域で、「マダガスカルやスリランカ、ベネズエラなどからもオーダーが届く」とグローバル。アジアは、韓国、香港に次いで日本の比率が高いという。

 

付加価値見せる

 日本ブランドがネット小売りを含む海外店で売ろうとする際、価格がラグジュアリーブランド並みになってしまう。ブランド側は価格の設定を再考するとともに、「ECサイト上で印象を残すためのデジタルマーケティングを店側と一緒に取り組んだり、トランクショーや受注会を開いたりといった付加価値を見せる」ことが有効と語る。実際、そのような取り組みができる日本ブランドの発掘に意欲的だ。

 「日本流のMDが世界でどこまで通用するか」が、海外に出て以降、テーマの一つになっているという。アクアガール時代に、ワールドの52週MDは体得した。「海外のバイヤーの買い付けは、基本的に直感が全て。そこに無理やり日本のやり方を当てはめるのではなく、直感と理論とをいかに組み合わせていくか」を常に意識している。「海外で働くのは、行動と結果が全て自己責任で非常にタフ。ただ、スポーツ選手と同様に、世界を舞台に自分の力が出せるということに大きなやりがいを感じている」

(繊研 2016/10/04 日付 19564 号 1 面)



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