【幸せを生むテクノロジー】ザ・イノウエ・ブラザーズ㊦

2018/02/25 04:45 更新


 ザ・イノウエ・ブラザーズはここ数年、南米アンデス地方の先住民と作るアルパカのニット以外にも、プロジェクトの幅を広げている。生産者に不当な労働を強いず、地球環境に大きな負荷をかけないエシカル(倫理的な)ファッションを切り口に、世界各地をリサーチする。

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継続的な仕組み

 11年の東日本大震災の直後には、東北の工場に限定Tシャツを発注するプロジェクトを開始した。12年以降はファッションブランドとしてのフォーマットも固まり、近年は中東やアフリカも視野に入れて活動する。

 中東では刺繍を、アフリカではビーズのアクセサリーを仕込んでいる最中です。アフリカはエイズが多くて治安も悪いですが、今年こそプロジェクトを進めたい。一方、中東は米トランプ政権の影響でうまくいきかけていた状況が逆戻りしてしまいました。

 いずれにしても常に環境は不安定なので、納期通りの生産は無理。小売りも難しいかもしれません。となると100%インディペンデントの方がやりやすいし、成功する可能性がある。そう考えて、クラウドファンディングのシステムを使う計画を立てています。

 「キックスターター」や「インディーゴーゴー」といった米クラウドファンディングは、集まる金額が半端ない。作ってくれと要望が多く集まれば、億単位で資金調達できます。対象が世界の2%だとしても立派なビジネスになる。テクノロジーなのに近しい感じすらするし、クリエイティブの力にワクワクします。グローバルクリエイティブキャンプみたいな感じです。

 クラウドファンディングでしか買えないコレクションも作りたい。目標は、継続的なビジネスの仕組みを作ること。こうなると銀行は大変ですね。

全てはバランス

 それぞれのプロジェクトを通して、責任ある生産方法に対する関心を世の中に生み出すことも目指してきた。

 この仕事を続ければ、ファッション業界を良い方向に変えられると信じている。今の若い子たちはよく分かっているから、誰かが苦しんでいることを知ったら引くと思う。エコは持続可能だと消費者が言い始めれば、大企業も大量生産はだめだ、嫌われるとなるはずです。

 戦って勝つのではなく、僕らの活動がインスピレーションになればいい。フェアトレード(公正取引)やオーガニックに興味を持ってもらえればいいのです。

 個人がメディアになって、できることは増えました。もちろん「テクノロジー・イズ・エブリシング」ではありません。人間の手で作られていることが一番大切です。でもそこで止まるとつぶれる。今の状況に溶け込んで、どこへ向かうかを考えてじわじわと広げることが重要です。

 僕らのプロジェクトは、15年前ではできなかったことです。インターネットがなければ僕らのことを誰も知ることはなかった。「グローバルに考えて、ローカルに行動する」。全てはバランス。そのバランスがよければ継続できると思います。

「ザ・イノウエ・ブラザーズ」の井上兄弟。兄の聡さん(左)と清史さん

「ファッションビジネス革命前夜」は本紙・電子版で




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