高まる「グローバル人材」へのニーズ

2014/08/29 10:36 更新


 海外での生産や販売など事業拡大が進む中で、企業による「グローバル人材」の確保や育成へのニーズが高まっている。一般的には自社の日本人社員を指すケースが多いが、企業の現地化を進める上では現地社員も対象となる。

 そのため、人材育成を支援する公的な機関もグローバル人材の育成に力を入れ、事業も拡大している。

 経産省の調査では、日本企業の海外拠点の設置・運営の課題として、「グローバル化を推進する国内人材の確保・育成」が74.1%とトップを占めた。特に、若手の人材は企業規模の大小を問わず、不足感が高くなっている。

 こうしたニーズを受け、海外人材の日本での受入研修や現地への専門家派遣を主要事業にしている海外産業人材育成協会(HIDA)では、「国際即戦力インターンシップ事業」が広がっている。

 経済産業省から委託を受け、ジェトロ(日本貿易振興機構)と共同で実施。日本の若手社会人や学生を、新興国、途上国の政府機関に派遣し、3~6カ月程度海外で実務体験するもの。

 12年度には86人のインターンを海外56の受け入れ機関に派遣。13年度は152人へと倍近くに増え、17カ国118の機関に派遣した。12年度の例で見ると、派遣先はベトナムやインドネシアなどASEAN(東南アジア諸国連合)が67.4%、インドやバングラデシュなど南アジアが30.2%と両地域で大半を占めた。

 HIDAによれば、この事業を通じて語学力が向上するだけでなく、「異文化理解度が大きく高まり、好奇心やチャレンジ精神も向上」するという。

 技能実習生制度の円滑な運用を支援する国際研修協力機構(JITCO)では「日本企業が海外展開を強める中で、現地人材の育成も強化している」動きを実感している。

 その一つの例が金融機関との連携で、昨年は横浜銀行グループの浜銀総合研究所、城南信用金庫と覚書を締結した。JITCOでは「中小企業の海外展開を支援する一環として、進出先の人材育成を日本で行いたい、というグローバル人材育成ニーズの高まりがあるのでは」と見ている。

 ジェトロの調査でも、海外拠点の現地化を進める上で、「現地人材の研修・育成の強化」や「即戦力となる現地人材の採用」を多くの企業が重要視している。実務研修を伴わない研修や、国や地方公共団体などの資金により運営される公的研修により来日する人数は、13年の法務省入管局の資料で1万6486人。企業が単独で現地法人や合弁企業、取引先の職員を受け入れて技能実習を実施する5585人よりも多かった。

 こうした人材の確保や育成に関しては、HIDAやJITCO、あるいはJICA(国際協力機構)なども取り組んでいる。しかし、制度自体を知らず、「自分で入管の書類を書いて申請する経営者もおり、もっと早く制度を知っていればよかったという中小企業経営者もいる」(JITCO)と話す。

 繊維・ファッションビジネス業界でも海外展開を拡大する動きが強まっており、今後もグローバル人材作りへの取り組みはますます広がりそうだ。



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