【ファッションとサステイナビリティー】サカエ ハンガー・カバーの完全リユース・リサイクル プラゴミを出さず資源を循環

2021/01/27 06:00 更新


 サステイナブル(持続可能性)な販売・物作りを考える上では、素材や製造工程だけでなく、サプライチェーン全体における取り組みが必要不可欠だ。物流、店頭用ハンガーにおいてもリユース・リサイクルの取り組みが進みつつある。総合プラスチックメーカー、サカエ(大阪府東大阪市)は、約10年前から物流・店頭用ハンガーおよびハンガーカバーのリユース・リサイクルに着手。金型製作から成型といったハンガーの自社一貫メーカーならではの強みを生かし、アパレルメーカーとの取り組みを広げている。

一貫生産を強みに

 サカエは、金型部門の協進金型、商品企画のロータス工芸、成型部門のサカエからなる協進グループの一員で、企画・設計から金型製作、成型までグループ一貫でできる体制を整えている。生産を一貫で出来る点は、リサイクルに取り組む上で大きな強みで、原料から製品に至るまで各段階で細かな品質チェックをしている。ハンガーリサイクルは同社が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みの一環。可能な限り使用済みハンガーのリユースを推奨しており、再利用できないものは粉砕しリサイクルに回す。ハンガーカバーの同時回収にも着手し、完全リユース・リサイクルを目指している。新品のハンガー生産も、プラスチックゴミを出さないように生産する力の入れようだ。

年間5万本を回収

 ハンガーリユース・リサイクルプロジェクトは現在アパレルメーカー6社と取り組んでおり、回収するハンガーは年間約5万本に上る。ハンガーおよびカバーの出荷から回収・原料化の流れは、まずサカエから出荷しアパレルメーカーで使用したのち使用済みハンガーをサカエへ返送。大阪の自社物流センターに集められたハンガーは、全て人の手で傷や汚れ、破損などをチェックしハンガーの素材や品番を確認、リユース品とリサイクル品に分別される。まだ使用できるものはハンガーを洗浄、アルコール消毒するなど「ほぼ新品に近い状態」にして梱包(こんぽう)し、リユースに回す。ハンガーにはテープやシールが付いている場合もあり、人の手と目による徹底したチェックが必要だ。返送されたハンガーの約9割がリユースされ、残りがリサイクルへと回される。ハンガーカバーの分別もこの段階で行われており、ハンガーから一枚一枚ハンガーカバーをはがして分別。ウレタン素材のため、提携ウレタンメーカーで再利用され、寝具の詰めものなどに用いられることもあるという。

送られてきたハンガーを一本一本人の手で分別していく

自社で粉砕、再利用

 破損などでリユースできないものや、他社製のハンガーなどはリサイクル原料として用いられる。人の手でハンガーを3等分くらいの大きさに裁断し、アルミフックを取り出す。アルミフックも傷がついていないものは洗浄するなどして再利用する。裁断したハンガーは、物流センターから同じく自社のハンガー生産工場へと送られる。そこで粉砕機にかけられ、より細かなチップ状となり、原料として再利用、バージン原料と混ぜて一般的なハンガーと遜色のない強度・品質を持つリサイクルハンガーが完成する。ハンガーの生産工程では、樹脂を金型に流し込む際に樹脂の通路「ランナー」という部分がでてしまうが、これも原料として再利用。プラスチックごみを出さない工夫がされている。

リサイクルされるハンガーを裁断し、アルミホックを取り出す

 こうした一連の工程は動画として同社ホームページやユーチューブでも公開している。サステイナブルへの関心の高まりから、最近ではアパレルからの問い合わせも増えつつあるという。回収するハンガーも今年は10万本くらいにまで増えると見ており、サステイナブルなファッション業界の実現に向け、リユース&リサイクルプロジェクトを更に推進していく。

裁断したハンガーやハンガー製造過程で出たものをさらに細かく粉砕し、再び使用できる大きさに
粉砕したチップにバージン原料のチップを混ぜ、ハンガー成型機に流しリサイクルハンガーが完成する

(繊研新聞本紙21年1月25日付)

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