米日小売業界の未来 フェイス・ポップコーン氏に聞く

2019/04/03 06:25 更新


フェイス・ポップコーン氏

《連載》米日小売業界の未来 フェイス・ポップコーン氏に聞く㊤ より大きなシェアへ進む

 フェイス・ポップコーン氏は、マーケティングコンサルティング会社「ブレインリザーブ」(ニューヨーク)の創業者兼CEO(最高経営責任者)。ポップコーン氏は1974年に同社を創業して以来、「コクーニング」「ホームショッピング」など数々のトレンドをいち早く指摘してきた。

 1年先2年先ではなく、5年先10年先といったスパンでトレンドを予測することから「フューチャリスト」「マーケティング界のノストラダムス」の異名をもつ。

 そのポップコーン氏に、アメリカと日本の小売業界の将来について聞いた。

同一化への反動

――小売業界は5年後、10年後、どう変わるとみていますか。

 マスカスタマイゼーションが、小売業の未来になると思います。体形とテイストは実に幅広い。カスタマイゼーションは富裕層のためのものだけではなくなります。なぜ企業が決めたスモール、ミディアム、ラージサイズに自分を当てはめないといけないのでしょう。消費者は同一化への反動として、個性を認めてほしいという強い欲求をもつようになっています。今日あるような店は、将来はなくなるでしょう。今年はすでに(アメリカで)6000店の閉店が発表され、その75%は服と靴です。

 消費者が求めているニーズをとらえて届けることができるEテイラー(EC事業者)が台頭します。例えば、アマゾンがお客の生体データにアクセスしたら、お客の内臓やその他のシステムが必要としている食べ物を届けることができるでしょう。不安や緊張を緩和し睡眠を改善させる効果のある食品や病気を改善する食事を送ることができるでしょう。そういう時代はすぐやってきます。

 小売店でAI(人工知能)とデジタルが取り入れられれば取り入れられるほど、人々は自発性と驚きを求めるようになります。夢中になって没頭できるイベント、想像を超えたコラボレーション、人と人が出会いその興奮が伝染するようなことが成功します。

中古品は成長

――どんなタイプの業態が将来、最も成長性が高いのでしょうか。ファストファッションはそんなに伸びないと思いますし、サブスクリプションビジネスがどの程度人気を保てるのか不透明です。中古品やレンタルビジネスは、シェアリングエコノミーのある種の在り方です。シェアリングエコノミーがさらに増えていくのでしょうか。

 「ファミリー・サブスクリプション」が、新しいビジネスモデルになり得ると思います。一定の値段で、家族全員と犬に服を着せるのです。個人個人がサブスクライブするより、グループでサブスクライブする、より大きなシェアエコノミーに進化していくかもしれません。

 レンタルと中古品ビジネスは成長できるでしょう。それもグローバルであるべきです。海外旅行をする時、現地でレンタルできるというものです。3Dプリントのドレスを設計して、現地で3Dプリントして着るということも起きてくるでしょう。中古品に関しては、フェイスブックの「TOKYO GARAGE SALE」のページが、日本に住む外国人が日本を引き払う時に物を安く売ったりあげたりする場として人気が上昇しています。

 私もファストファッションの人気は下がっていくと思います。環境への負荷が大きすぎるからです。社会や環境を守りたいという思い、公害や汚染された水や食べ物への恐れがますます高まります。

(ニューヨーク=杉本佳子通信員、写真も)

連載の続きは繊研新聞、繊研電子版に掲載予定です。



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