本日、ファッションビジネス業界の一員となられた皆さん、おめでとうございます。心から歓迎の言葉を贈ります。
ファッションビジネスはとても広く、奥の深い世界です。素材から小売りまで多種多様な企業があり、地球規模で多くの人々が仕事をしています。
それは、ほかの業種でも同じでは?と思われるかもしれません。確かにそうなのですが、ファッションビジネスには独占も、寡占もされない市場があります。
巨大な企業が市場で占有率を高めることはあっても、それが100%になることは決してありません。一人ひとり異なる個性を持つ人々の思いに応えるビジネスであり、それゆえに一人ひとりのアイデアや技術しだいでチャンスがあるビジネスなのです。ここにファッションビジネスの大きな特徴があります。
今、皆さんが着ているシャツやブラウスは、どこで買いましたか? お店でしょうか。それとも、ネットでしょうか。
いずれにしても、皆さんに手渡してくれた人がいますよね。その人には、その商品を仕入れた誰かが手渡しました。その商品は、縫製工場で多くの手をかけて形作られ、アイロン掛けして仕上げてから送られています。
縫製工場には、織・編物が反物として運ばれました。織・編物を作ったのは全く異なる工場で、糸を仕入れ、織機や編み機を動かした人々がいます。そこに運ばれた糸も、紡績工場や合繊メーカーで生産・管理されてから届きました。綿の紡績なら、そこに至るまでに綿花を育て、わたを収穫した人々がたくさん関わっています。
1枚のシャツやブラウスが買う人に届くまで、実に多くの人の手を介しています。ほかのアイテムも同様であり、こうして人から人へとつなぐ仕事のつながりを、サプライチェーンと呼んでいます。ファッションビジネスは、このチェーンが単調な1本ではなく、数え切れないほど多彩です。それは日本にとどまらず、世界中でダイナミックに変化し続けているのです。
皆さんは本日から、単に買う側の1人ではなく、この彩り豊かなチェーンの一員になります。これから身に着ける知識や技術、新たな発想の全てが、さらにチェーンを太く、強いものにしていきます。それがファッション市場の面白さに直結するのです。皆さんが成長すればするほど、この市場の魅力に磨きがかかることを忘れないでください。
もちろん課題はあり、すぐに解決は難しいかもしれません。しかし、繊研新聞社も「共感と解説」を掲げ、皆さんとともに成長し、学べるよう努めます。皆さんの良きサポーターでありたいと考えていますので、どうぞよろしくお願いいたします。