入門・クラウドファンディング③ 成長する「購入型」

2017/12/30 17:00 更新


 前回は複数の形態に分類される「クラウドファンディング」の詳細と、それぞれの特徴について書きました。今回は活用する事業者が急増している購入型クラウドファンディングを中心に、その成長の背景や活用メリットについてご紹介します。

 購入型は、支援者に対して「物品またはサービス」をリターンとして提供する形態であり、広義にはECと同様の位置づけであることや、最も高い市場成長率で伸びていることは前回お伝えした通りです。ではなぜ昨今、この購入型が急成長しているのでしょうか。

 私は、時代背景や日本の経済・社会の環境による部分と、購入型を活用することで得られるメリットが、多くの事業者にとって共通の経営課題を解決するアプローチとして有効であったことが要因ではないかと考えています。

 前者の観点では、日本国内においてクラウドファンディングの本来の意味である「資金調達」における環境が良好であり、ベンチャーキャピタルやCVC、エンジェル投資家などからの投資や銀行からの融資が実施しやすい環境であるため、クラウドファンディングを活用せずとも十分に資金ニーズを満たせるケースが増えつつあったことや、「資金調達」の意味で有効な金融型クラウドファンディングに関する法規制が厳しく、参入する事業者もまだまだ少ないことが挙げられます。

 また、海外と比較すると日本国内では一般消費者の方に「投資」や「寄付」の文化が根付いておらず、投資や寄付を行うよりも、「貯蓄」したお金を「消費」する習慣が根強いこともあり、寄付型や金融型よりも購入型が普及しやすい状況にあったのではないかと考えています。

 後者の観点では、購入型クラウドファンディングの活用で得られるメリットが、前述の「資金調達」ではなく、「マーケティング」としての意義が非常に大きく、多くの事業者が他の代替手段で解決できていない課題に対して有効であることが挙げられます。

 少子高齢化や人口減少トレンドに伴い、今後、国内の既存市場は縮小していくことが明らかであり、どの事業者も新規事業や新製品・新サービスの開発による中長期の成長の実現が必要不可欠になりつつあります。

 しかし一方で、新しい取り組みには常に高いリスクが付きまといます。そのような状況下において、購入型は事前に支援者から予約購入のような形で注文を受け付けることで、あらかじめその製品やサービスのニーズを確認したり、事業性を検証しながらプロモーションやPRの強化を図ることができます。これにより、リスクを低減した形で新しい取り組みにチャレンジすることが可能になるのです。

 次回は、購入型クラウドファンディングのマーケティングとしての活用可能性や具体的メリットについて、より詳細に考察を進めていきたいと思います。(北嶋貴朗・Relic代表取締役CEO)




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