入門・クラウドファンディング⑪ 顧客との共創手段

2018/01/07 17:00 更新


 これまでの連載の中で、クラウドファンディングの分類や基礎的な知識から、主に購入型クラウドファンディングの具体的な活用方法や活用事例、それに伴う実務やノウハウなどについて、一通りのご紹介をさせていただきました。最終回になる今回は、今後のクラウドファンディングの可能性や経済に対するインパクトについての考察をまとめたいと思います。

 今後のアジアを中心とした世界経済の発展に向けて、国家よりも、優れたアイデアや実行力を持つ企業や個人の影響力が相対的に強くなっている今日においては、それらがいかにつながり、新しい社会価値を創造するかが極めて重要となります。また、こうした環境変化は「経済のグローバリゼーションの進展」と、インターネット環境の世界的な整備及びネットワーク化による「世界的な情報の非対称性の縮小」によって、ますます加速すると考えられます。 

 購入型クラウドファンディングは、こうした環境変化の中でオープンイノベーション、すなわち「イノベーションを促進するために内部のリソースだけでなく、外部の技術やアイデアなどの資源の流出入を活用して共創を目指すアプローチ」における、「顧客との共創手段」の一つとして大きな注目を集めています。

 それは、従来の新規事業や新商品開発のプロセスを大きく変える新たなマーケティング手法としての可能性を秘めており、内部での入念な調査や慎重な合意形成を経て初めて意思決定がなされる合議制の経営と、その弊害で硬直化した日本企業の文化や組織に一石を投じることを期待されているからにほかなりません。

 クラウドファンディングの活用により、事業アイデアを実行する前の調査や検討、社内議論に多大な時間やコストを投じるのではなく、まずは世に出して挑戦してみる、その上で顧客=市場に対してアイデアの価値を問い、反応を見ながら開発を進めるプロセス及び企業文化を実現することで、日本企業発のイノベーションの種を増やし、産業発展に寄与する大きなインパクトが生まれるのではないかと考えています。

 特に市場が成熟した日本企業の経営においては、今後新たな市場を創造するための新規事業開発に注力していくことが必須になります。そのため、世界中で生まれつつあるクラウドファンディングを活用した取り組みを、業種や業界、企業規模を問わず一層活用していくことが重要になるのではないでしょうか。

 本連載により、日本企業の「クラウドファンディング」に対する理解が進み、顧客との共創、それも国内顧客だけでなく、グローバルを視野に入れた顧客との共創が活性化し、結果的に日本企業におけるイノベーション創出の確率を高めて日本経済の発展に少しでも寄与できれば、筆者にとって望外の喜びです。

(北嶋貴朗・Relic代表取締役CEO)

きたじま・たかあき 大企業から中小・ベンチャー企業まで延べ100社以上の新規事業開発やオープンイノベーション、マーケティング/営業を支援。自社で運営する複数のクラウドファンディングサイトや、マーケティングオートメーション/CRM/SFAサービスも展開



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