アドバンストスタイル~業界のすてきなマダムたち

2016/02/05 14:38 更新


【センケンコミュニティー】アドバンストスタイル~業界のすてきなマダムたち

 人生の大先輩たちのファッションが、映画や本のヒットで話題だ。もちろん私たちの業界にも、お手本にしたいすてきな先輩がいる。映画の影響じゃないけれど、彼女たちのスタイルが今、改めて輝いて見える。自分らしくしなやかに前を向くその姿は、周りにも元気をくれる。
装いで大切にしていることは? 最近のお気に入りは?

その話も魅力たっぷり。

☆彡 「ユキ・トリイ」デザイナー 鳥居ユキさん

☆彡 ワイエムファッション研究所 社長 渡邊万里子さん

☆彡 プラザフラウ・ショップオーナー 八幡花子さん

☆彡 パーマネントエイジ 林多佳子さん

☆彡 ドレスメーカー学院・高度アパレル専門科 科長 渡邊千佳子さん

☆ そごう・西武の写真展 おしゃれマダムに共感する女性たち


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☆彡 「ユキ・トリイ」デザイナー 鳥居ユキさん
元気になれるのが基本
16年春夏コレクションのマルチボーダーニットとデニムのガウチョパンツ。ブーツもユキ・トリイのコンフォートシューズ
16年春夏コレクションのマルチボーダーニットとデニムのガウチョパンツ。ブーツもユキ・トリイのコンフォートシューズ

 

 自身の日常のスタイルを紹介する本を出版したほど、生活まるごとがおしゃれ。爪の先までちゃんと神経が行き届いているのに、振る舞いはいつもさらりとしているのもカッコいい。ベテランデザイナーは、コーディネートの達人でもある。3月には西武池袋本店で消費者向けのイベントも開催する。

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 仕事をするのには着やすいことも大切ですが、突然いらっしゃるお客様への対応もありますから、毎日違った感じに見えるようにしています。朝ギリギリまで考えて、これじゃやっぱり違うわ、と玄関から戻って取り替えることも。同じ服であっても、今日はこのネックレスを中心に、今日はガウチョパンツを主役に、など、別の視点で組み合わせるんです。そしてもちろん、自分が元気になれることがスタイリングの基本ですね。

 朝の時間にそんなにきちんとできるかって? 日課が決まっていて、休みの日も崩しません。起きてストレッチして、お庭を回って、お化粧して朝食。ストレッチのポーズも一つひとつ抜かしません。増えちゃうことはあるけれど。

 その人らしさというのも大切だと思います。友人に全身生成りでかためている女性がいるんですが、大きなアクセサリーを合わせるやり方がすてき。そういうのも好きです。

 最近、気に入っているのはガウチョパンツ。だから足元はブーツが多いですね。もしパンツが黒ならブーツは赤や茶など別の色で。誰かにアドバイスするとしたら、一つだけ、めんどくさがっちゃダメ。


【私のお気に入り】

 写真で見て一目ぼれした秋田の木製建具製造工、齊藤重太郎さんの組子細工。偶然、秋田で会う機会に恵まれた。自宅のバスルームにもはめ込んである。

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☆彡 ワイエムファッション研究所 社長 渡邊万里子さん
リラックスして自分らしく

渡邊万里子さん

 

 多様なピンタック技法を加えた服作りが特徴のレディスアパレル「ヤッコマリカルド」を発信するワイエムファッション研究所の創業者、渡邊万里子社長。彼女のファッションは〝女性の解放〟を象徴する。

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 身に着けるものは自分らしくあることを大事にします。今は女性のおしゃれのルールが緩やかになっています。着こなしは自由にアレンジすることができ、着る人の個性がファッションを通じて表れます。私は服を選ぶ際には、上品でありながらリラックスした雰囲気を大切にしています。

 きょうはヤッコマリカルドのシープスキンのナッパレザー・ジャケットを羽織り、ボトムは全体にゆったりとしたシルエットで裾を絞り込んだウールパンツと組み合わせました。アクセサリーは自然石の周囲に繊細なかぎ針編みの装飾を加えたものでロンドンで見つけました。日本ではまだまだ小ぶりなアクセサリーが多いですが、欧州のマダムたちが好む様な大胆なデザインのものを、もっと日本の女性は身に着けるべきだと思います。

 私がファッションを意識したのは中学生のころ。母の手ほどきで裁縫を覚え、自分や妹の着る服を作っていました。60年代にはストライプ柄のラッパズボンやインポートジーンズをはいていました。当時ヒップラインや脚線が出るので恥ずかしかったことを覚えています。70~80年代にかけては〝女性を縛り付けない〟綿やリネンの天然素材による自然体の服が登場して、私も好んで着ていました。ファッションはその時々の新しい自分を発見する大事なものです。

【私のお気に入り】

 裏原宿などで小さな店を構えている若いクリエーターが作る帽子に注目しています。個性的なデザインを見ていると、自分がヤッコマリカルドを立ち上げた当時を思い出します。

 

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☆彡 プラザフラウ・ショップオーナー 八幡花子さん
ファッションは心を纏(まと)うもの

 

八幡花子さん

 

 作家性の高いデザイナーブランドが揃うセレクトショップ「プラザフラウ」(東京都杉並区)の創業者、八幡花子さん。店のオリジナリティーを大切にする姿勢は、ファッションスタイルにも反映している。

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 ファッションは心を纏(まと)うもの。メンタルな要素が非常に大きいです。気分が沈んでいるときには、服の持つ勢いに負けてしまうこともあります。また、おろしたての服を着たときには気持ちが前向きになります。私が日頃、身に着けるもので心掛けるのは、その日の外の光や湿度、気温です。時々の気候を、装いに採り入れ、その季節感をちょっと先取りしています。

 今日は「ルーシィトルテ」のニットプルオーバーにショートパンツを合わせました。ショートパンツは思い切った装いのようですが、同色のタイツと合わせると十分着こなせます。ファッショングッズも大切です。「ミナ・ペルホネン」のブローチ、ロンドンではやっているプラスチックブロックの指輪、「ピエール・ラニエ」の花柄の腕時計、「キャピタル」のペーズリー柄のウールバンダナ、それぞれが個性的でアクセントになっています。

 私は高校生のころに「VAN」のメンズジャケットや、英国産の古着のダッフルコートを着ながら、銀座の並木通りかいわいに通いつめていました。当時の舶来ファッションに憧れながら、そのあか抜けたセンスを感じ取っていました。〝おしゃれ〟は年を重ね、生き方がそこはかとなく表れてくるものです。時間をかけなければ得られないものだと思います。

【私のお気に入り】

 ウエットスーツ素材で作られたレイ・リケットのバッグ。凹凸のデザインや柔らかな触感、雨に塗れても安心な機能がある。このバッグはいつでも、いつまでも作者が直してくれる安心感がある。

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☆彡 パーマネントエイジ 林多佳子さん
年齢を重ね色の幅が広がる

 

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 正統でも遊びでも、こだわりのある洋服と雑貨が並ぶ「パーマネントエイジ」(兵庫県西宮市)を夫の林行雄代表とともに創業した林多佳子さん。そのスタイリングは「大人服」のお手本として近隣だけでなく、全国から多くのファンが店に集う。

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 ファッションは最終的に楽しければ良いと思っています。気分を上げて前向きに過ごすためにも、服を選び、纏(まと)うことは大事なことだと思います。私が大切にしているのは、自分に合ったバランス。着心地が良く、無理なく自分らしさを表現したいと思っています。

 リラックス感のあるルーズシルエットより、私は体を動きやすくする適度なフィット感を求めます。神戸ファッションで育ち、大人になって様々な国内外のデザイナーやファクトリーブランドも着てきましたが、今はベーシックを好んでいます。末永く着られるベーシックですが、今のファッションの流れに合うことを心がけています。

 気になるカラー、素材でコーディネートが決まるものならブランド、価格はこだわりません。年齢を重ね、グレーヘアとなり、強い原色の服も柔らかい印象になったので、色の幅が広がりました。リーディンググラスもコーディネートアイテムとして増えました。
 きょうはオリジナルのニットジャケットとパンツ、「ヤエカ」のシャツに靴はエルメスです。眼鏡と合わせ、爽やかなネービーと白のカラーリングにしました。立ち仕事なのでソックスはむくみを防ぐ機能を持つ「ルフトハンザ・ニュー・フライアンドケア」。見た目もきれいなので愛用しています。

【私のお気に入り】

 リーディンググラスは年齢を経て加わったアクセサリー。目の大きさや顔の形に合わせると細長いフレームになりますね。カラーコーディネートができるように約20本所有しています。

リーディンググラスは年齢を経て加わったアクセサリー。目の大きさや顔の形に合わせると細長いフレームになりますね。カラーコーディネートができるように約20本所有しています


☆彡 ドレスメーカー学院・高度アパレル専門科 科長 渡邊千佳子さん
清潔感や凜とした雰囲気 

 

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 ドレスメーカー学院の高度アパレル専門科で教鞭(きょうべん)を執る渡邊千佳子科長。クリエーションとマネジメントを兼ね備えたスペシャリスト育成を目指す同科で、学生たちに常に前向きな姿を示す。

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 ファッションの楽しさや素晴らしさを伝える立場なので毎日、異なるコーディーネートで教壇に立つことを意識しています。大切にしているのは、清潔感や凜(りん)とした雰囲気。シンプルなワントーンカラーでIシルエットを表現できるものを好んで着ます。仕事着でもあるので動きやすいことも大事です。

 きょう着ているのは「ランバンオンブルー」のワンピース。上品なネービーカラーが気に入っています。レザージャケットは「アツロウタヤマ」です。細身のシルエットで羽織るだけでキマる一着です。

 私の高校生のころはテクノブーム全盛で、私自身ヘアスタイルはテクノカットでした。80年代のこのころから田山淳朗氏のデザインする服が好きです。20代だったバブル経済期の90年代には、仕事帰りに毎日の様に渋谷パルコで買い物を楽しんでいました。30代になるとカラフルな色使いのファッションに興味が移り、5色ぐらいのカラーコーディネートで全体がまとまる服を身に着けていました。でも、私はいつの時代も一貫してアツロウタヤマのファンです。田山氏のクリエーションに対してブレない姿勢が魅力です。

 ファッションは本来、横並びの服ではなく、その人らしさが表現されるものです。気分が盛り上がる服をこれからも着続けていきたです。


【私のお気に入り】

 小さなデジタル機器、特にハイレゾリューション(高解像度)関係にはまってます。スマートフォンと連動したレンズスタイルカメラもユニーク。メーカーは全てソニー。

ドレメ渡邊+ハイレゾ+機器 (1)


そごう・西武の写真展
おしゃれマダムに共感する女性たち

 「これからの女性の生き方はエージレス。豊かに年を重ねた人々が、自分らしく、自由な発想で装いを楽しんでいる。そんな姿に、世代を問わず共感が広がっている」――そごう・西武はアドバンストスタイルを社会的ムーブメントと捉え、情報発信に取り組んでいる。

 西武渋谷店は昨年、「NYマダムのおしゃれスナップ展」を開いた。写真家アリ・セス・コーエン氏がNYの街でおしゃれマダムを撮影した写真集「アドバンスト・スタイル」から、約150点を展示。1週間の会期で約1万4000人を動員するヒットを飛ばした。そごう神戸店(1万人動員)、同広島店(1万2000人)、西武福井店(5000人)と巡回し、それぞれ活況。3月には西武池袋本店やそごう千葉店でも開く。

 ヤングから等身大まで、幅広い世代の女性が「わざわざおしゃれをして」足を運んだ。写真とともに添えたマダムたちの「メッセージ」に共鳴し、メモをして人生訓にする人も。「若い時は誰かのために、しかし年をとると自分のためにドレスアップするようになるのよ!」など、年を重ねた彼女たちの言葉だからこそ胸に深く刺さる。

 今年3月8日から、第2弾「世界のマダムのおしゃれスナップ展」が西武渋谷店で始まる。ミラノやブエノスアイレス、東京(28日まで)など各都市のおしゃれマダムが登場する。お国柄の違いや地域性など楽しみ方も増え、アドバンストスタイルへの共感はさらに広がりそうだ。

モンテネグロのマダム。「世界のマダムのおしゃれスナップ展」から

写真=モンテネグロのマダム(「世界のマダムのおしゃれスナップ展」から)



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