「バレンシアガ」は21年フォールコレクションを、ビデオゲームを通して発表した。コロナ下において、多くのデザイナーが新しい発表方法を模索するなか、ショーでもフィルムでもなく、進化著しいゲームをメディアに選んだ。ラグジュアリーブランド初の試みとなる。
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インタラクティブな遊びの要素を通して、デジタル化が進む今を体感できる面白い取り組みだ。新しい手法に挑む姿勢はポジティブで、次の時代のファッションの方向性やヒントが感じられる。一部ゲストは送られたヘッドセットを通して、より立体的なVR(仮想現実)を楽しんだ。
「アフターワールド、ザ・エイジ・オブ・トゥモロー」と題したゲームの舞台は、少し先の2031年。バスがねじれて異次元に消えていく様子が近未来を思わせるが、ぱっと見は今の地球とさほど変わらない。そこに妙なリアリティーがある。
ゲーム画面には、ショップの中や街の通りが映し出される。矢印に沿って進むと、随所に新作を着たアバターが登場する。服のデザインはいたってベーシック。しわ加工のテーラードジャケットに、着こんだようなセーターやボロボロのデニムパンツなどデイリーウェアにこだわった。ラフなフーディーやキャップなど、デムナ・ヴァザリアによるバレンシアガの定番といえる服も多い。シルバーのサイハイブーツは中世の騎士風。レトロな宇宙服を思わせるNASA(米航空宇宙局)のロゴ入りバッグもある。さまざまな過去の要素をプラスしながら、街になじむ軽やかなスタイルに仕上げている。
街を抜けると舞台は夜の森に。小高い丘を登ると、レイブ会場に到着する。さらに登り洞窟を抜けると、朝日が昇る山頂でゴールとなる。ゲームはゾーン5まで。ゾーンごとに時間制限があり、ゴールしなければゲームオーバーとなる。ゲーム慣れしていないと動作はおぼつかないが、新しい表現方法に想像以上に引き付けられる。
(青木規子)