23年春夏パリ・メンズコレクション ダブレット、時の止まった空間で雪降り積もるショー

2022/06/30 11:00 更新


ダブレット

 ダブレットのショー会場となった高校の中庭には、初夏のまぶしい光の下でバーベキューをする人たちやピクニックをするファミリー、バドミントンをする子供らが集っている。しかしショーが始まる直前に突然、時間が止まったかのように広場の人たちの動きが静止する。モデルたちは時間が止まってしまった空間を歩いて登場するのだが、やがてそこに季節外れの雪が降り積もる。

 絞りでボリュームを出したドレスはダイバーシティー(多様性)を感じさせるキャスティングで見せる。クロシェニットでできたトップやスカート、ラメのスカジャンのセットアップなど、ダブレットがずっと手掛けてきたアイテムが今シーズンも充実する。箔(はく)のライダーズジャケットは焼け焦げたようなディテール、雪が積もったライダーズジャケットもある。だまし絵のようなデニムプリントのセットアップや顔まですっぽりと隠してしまうホラーイメージのコートやジャージーも、まるでダブレットのアーカイブをたどっているようだ。寒くて凍えるような演技をしながらTシャツで歩く少年を見ていると、今回は服というよりもこの時空のゆがんだ空間でショーを見せたかったのだと感じる。フィナーレにモデルが人々にタッチすると魔法が解けたように、広場の人たちが動き出す。

 井野将之はかつてシンガポールのドーバーストリートマーケットに雪だるまを持ち込んでポップアップを行ったことがある。その時の、雪を初めて見た子供たちの笑顔が忘れられないのであろう。時空をゆがめたショーからはそんな無垢(むく)な思いが伝わってきた。

 ヘッド・メイナーはテーブルクロスのようなカットワーク刺繍の四角いアイテムがベースとなる。白いスクエアなカットワークのフロントの一方で、バックはばっさりと背中を開けたり後身頃を違う生地で切り替えたり。テーラードジャケットもフロントだけのベアバックもある。スクエアディテールのベアバックの一方で、ビッグサイズのジャケットやコートも継続している。

 エチュードはパリ郊外の廃線となった線路の引き込み地でのショー。生成りのデニムスーツや破れたホワイトジーンズ、デニムシャツとデニムショーツのセットアップなど、ユーティリティーアイテムが充実。デニムのカバーオールやファイアマンコートなど、80年代に流行したカジュアルアイテムも出ている。シンプルなアイテムの一方で、赤やイエローのにじんだような抽象柄も見せた。



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