18春夏ロンドン・メンズコレ テーラードで新時代

2017/06/13 04:15 更新


 【ロンドン=小笠原拓郎、若月美奈通信員】若手ブランドの孵化(ふか)装置として機能してきたロンドン・コレクションの中でも、メンズはここ数シーズン、ラグジュアリーストリートを中心としたブランドが市場をけん引してきた。しかし、若手を中心とするだけに財務基盤が弱く、数年ごとにブランドが維持できずに縮小する山と谷の時期が交互して訪れる。

 18年春夏は、JWアンダーソンがピッティ・ウォモで発表のため不在、シブリングもブランドを休止、マーガレット・ハウエルやバーバリーはレディスで一緒に見せるので不参加といった状況だ。ケイスリーヘイフォードも不参加、アレキサンダー・マックイーンはパリでの発表ということで、メンズコレクション単独の開催が危ぶまれる事態でもある。そうした中、若手、新進ブランドのデザイナーたちはそれなりに頑張り、これまでプレゼンテーションだったデザイナーも何人かがショーデビューした。加えて、日本からの参加ブランドがロンドンを支えている。

Eトウツ

 英国の伝統ともいえるテーラードスタイルで、どうやって今の時代を描けるか。それに挑んでいるブランドは少なくない。ジョルジオ・アルマーニを思わせるゆったりとしたフォルムを、今の時代にチューンナップする。そんなクリエイションを続けているEトウツは18年春夏、「クワイエット・ライフ」をテーマにした。英国のニューロマンティックバンド、ジャパンが79年にリリースしたアルバム名だ。そこにはこの1年に起きた世の中の混乱に対する思いと、スタイルの時代背景が込められている。オーバーサイズのボックスシルエットのショートブルゾンにゆったりとしたショートパンツ、からだが泳ぐだぼだぼのテーラードスーツ。シャツはスタンドカラー、あるいはロングポイントカラーに冗談のように細いタイをしめ、スペシャルな感じを出している。

 今年150周年を迎えた老舗テーラーを09年、クリエイティブディレクターであるパトリック・グラントが買収し、コンテンポラリーなメンズブランドとして再生を図った。ブルゾンのようなスポーティーなアイテムにも力を入れているが、テーラードの新しい可能性を探るリーダーの一人として着実にその立ち位置を築いている。


ウェールズ・ボナー

 LVMHヤングファッションデザイナープライズを受賞して話題のウェールズ・ボナーは、今シーズンもテーラーリングを軸にしたスタイルを見せた。スーツのシルエットは縦に長く、ハイウエストからブーツカットのように見えるライン。二つボタンのジャケットでも、ボタンの位置が一つボタンのように身頃の中心付近に置かれて、シャープなイメージを作る。


 側章のパンツは縦長のきれいな落ち感を作る。テーラーリングを軸に新しいスタイルを作り出そうとしている意図は分かるのだが、キャッチーな抜け感が足りない。もちろん、テーラーリングという男性服の王道で新しいスタイルを作ることはそんなに簡単なことではない。しかし、そのもがいている姿が、どこか90年代後半にイエール大賞をとりテーラーリングと格闘していたウド・エドリングを思い出させる。やはり、テーラーリングに執着しながら、大きくテーラードの様式を変えるところまでいけずに、コレクションを休止してしまった。ボナーはこの先、テーラーリングに新しい光を当てることができるのだろうか。

(写真=catwalking.com)




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