【パリ=小笠原拓郎、青木規子】17~18年秋冬パリ・コレクションは、スリットやカットワークのディテールで素肌をのぞかせるテクニックが増えている。コートもバックシームを割って下のドレスを見せたり、ドレスはウエストの横側を大胆にカットしたり。大人っぽい雰囲気の女性像を描いている。
ヴァレンティノは手仕事の技をちりばめながら、縦長のシルエットをロマンティックに仕上げた。プリーツを重ねたAラインドレスや繊細なピンクと赤のレースをはぎ合わせたドレス、手の柄をプリントやアップリケで描いたレザードレスもある。
花畑を思わせる壮大な花プリントのドレスやカットワークレースの花柄コート、花プリントのベルベットパンツスーツ、黒の中に描かれたたくさんの花に埋めつくされる。縦に透け感の布を切り替えたドレス、サイドやバックに深いベントを入れたコートなどで、縦長のシルエットを強調する。
ほとんどのドレスやコートはミドル丈からマキシ丈で、そこに後ろ側をカットアウトしたブーツを組み合わせる。ドレスと組み合わせたブーツはフロントから見るとそのままだが、バックから見るとカットアウトによってドレスの下にパンツをはいているような錯覚を起こす。たくさんの色を取り入れた象眼のファーコートや短く刈り込んだファーのストレートコートなど、ヴァレンティノらしいハンドクラフトの技術を生かして見せた。
ステラ・マッカートニーは、自身のクラシックなシグネチャーを探ったコレクション。ブリティッシュテーラーリングを軸に、前シーズンよりも大人っぽいイメージを作った。チェック柄のコートは胸元にスカーフのようなインナーを合わせてドレープで遊ぶ。パンツスーツはウエストをぎゅっとシェイプさせたシルエット。ダブルブレストのコートは襟が2枚重なるアシンメトリーカラーやサイドシームを割ったスリット入り。
ドレスに描かれた馬とライオンのプリントは、18世紀の英国の画家のジョージ・スタッブスによるもの。ビュスティエのようにバスト部分を立体的に作ったニットやハイネックトップで、女性らしさを強調する。イブニングはチュール刺繍のレイヤードスタイル。ドレスにシアードレスを重ねたり、レースのトップにマーガレットのようなマイクロジャケットを組み合わせたり。
セリーヌのショーが始まると、観客席が遊園地のメリーゴーラウンドのように回り始める。その回りを、足早にモデルが回遊するという趣向。モデルたちが身を包んだのは、きりりとした雰囲気のシャツドレスやパンツスーツ。フィービー・ファイロの定番的アイテムが充実した。ロング丈のシャツドレスは、テープ状の裾が軽やかに舞い、共布のかっちりとしたパンツは膝のスラッシュが程よい軽さになっている。
太い袖のシャツドレスは、ウエストからヒップにかけては体にぴったり沿って女性らしい曲線を描く。パンツスーツのジャケットはボックスシルエットのピークトラペル。ジャケットもシャツも襟は大きめで、マスキュリンなアイテムをフェミニンに仕上げている。雑貨はブランケットのようなストールやレザーのスカーフ、柄はシティーマッププリントが新鮮だ。
サカイはミリタリーやトラディショナルな英国調に、レースやフリンジ、パール飾りを重ねたハイブリッドスタイル。秋冬は特にジップディテールとアイウェアが効果的に使われている。パジャマスーツは太ももや膝のジップがぱっくり割れ、ミリタリーコートやケープは背中心のジップがスリット状に開いている。切れ目から素肌やランジェリードレスがのぞき、迫力のある縦長スタイルに抜け感をプラスする。ツイード仕立てのスキージャケットにフリンジが流れるジャージーブルゾン、ビジューを飾ったノルディックセーター。さまざまな要素を重ねるが、その量感はややボリューム過多か。ハイブリッドというサカイのオリジナルをベースにしながらも、時代に合わせた次の展開が求められる。
(写真=大原広和)