17~18秋冬ロンドンコレ、鮮やかな色

2017/02/21 06:28 更新


 【ロンドン=小笠原拓郎、若月美奈通信員】17~18年秋冬ロンドン・コレクションでレディスとメンズを一緒に見せる動きが広がっている 。一方、シーナウ・バイナウへの取り組みはあまりなく、今後のコレクションのあり方について模索状態にある。若手を中心に前半にショーを行ったブランドでは、鮮やかな色使いが台頭している。


■JWアンダーソン フェミニンな要素増す

J.W.Anderson Fall Winter 2017 London Fashion Week Copyright Catwalking.com 'One Time Only' Publication Editorial Use Only

J.W.Anderson Fall Winter 2017 London Fashion Week Copyright Catwalking.com 'One Time Only' Publication Editorial Use Only

 作りかけて放置したかのようなデコンストラクトなライン、ミニマルな中で描くアブストラクトな装飾。そんなJWアンダーソンのデザインは、ここ数シーズンでずいぶんと変化した。一言で言えば、どんどン装飾的になっている。ここ数シーズン続けてきた長い着丈で下にバランスをとったフォルムが減り、着やすいアイテムが揃う。とはいえ、それがジョナサン・アンダーソンの確立した次のカットというところまではまだ到達していない。

 胸元のスタイのようなアイテムに流したドレープ、スリットの中に挟み込んだフェザーディテールのスカート、ドレスの胸のストラップに飾った箱ポケットといったディテールが今シーズンの特徴になる。メタリックな柄をコラージュしたようなドレス、ミドリフ丈のレザージャケット、大きく胸元を開けたコンビネゾン。凛(りん)とした空気をはらんでいたジョナサンのデザインが、少し甘くフェミニンになった。コヨーテのようなファーコート、ヘムに縦にフェザーが揺れるプリントドレスなど、アイテム一つひとつはキャッチーで新鮮なもの。このラインのほうが売りやすいという見方もできるが、市場の評価はどうなるのだろうか。

■シモーン・ロシャ

Simone Rocha Fall Winter 2017 London Fashion Week Copyright Catwalking.com 'One Time Only' Publication Editorial Use Only

 シモーン・ロシャはプロテクトや甲冑(かっちゅう)、迷彩といったマスキュリンの要素とフェミニンなフォルムを合わせて独自のスタイルを作る。前シーズンは、ややコムデギャルソンからの影響が強すぎるきらいがあったが、秋冬はその思いをセーブしてロシャらしい繊細さと強さのバランスを見せた。

 ボンディングベルベットのボリュームを生かしたミリタリーコートは、その量感と大きなポケットが特徴。チュールに花を刺繍したドレスはレザーのハーネスを斜めに巻きつける。シャツにかぶせたキルティングのベストやドレスは、何かからプロテクトする意味合いの象徴に受け取れる。一方、フェミニンな要素ではクロシェの花柄ドレスやレースのドレス。ブルーの花柄ドレスは上からブラックレースのドレスを重ねて着る。赤い花柄の透け感のドレスの上にファーのボリュームショールを羽織ったスタイルは、粗野な中に秘めた美しさを感じさせる。

■チャラヤン

Chalayan Fall Winter 2017 London Fashion Week Copyright Catwalking.com 'One Time Only' Publication Editorial Use Only

 16年ぶりにロンドンにカムバックしたチャラヤン(フセイン・チャラヤン)は、以前もショーを行ったことがあるサドラーズウェル劇場で、ギリシア文化に着想を求めた構築的かつリラックスしたムードの新作を見せた。ギリシア風のラップベルト、古代の地図のモチーフといった要素が加えられているものの、全体的にはしっとりとした色で綴るウェアラブルなコレクションだ。

 肘や膝が横に三角形に張り出したシルエット、ワンピースやコートの後ろ下がりのバランスが独自のムードを出している。白いロングシャツの腰の部分にずり落ちたように巻きつくテーラードジャケットは、スタイリングではなく合体した1着のアイテム。フィナーレで、ジャケットやワンピースの胸に縫い付けられた紙のピースをモデルが手で破り取ると、羽根やメタリックなフリンジテープがこぼれ落ちるという6体を揃え、アートとファッションの狭間を探るコンセプチュアルなクリエーションの健在ぶりも見せた。

■ガレス・ピュー

Gareth Pugh Fall Winter 2017 London Fashion Week Copyright Catwalking.com 'One Time Only' Publication Editorial Use Only

 ガレス・ピューはナチス・ドイツを舞台にした映画「キャバレー」や「愛の嵐」の世界をイメージしたセクシーかつアグレッシブなコレクション。肩が張り出したシェイプドジャケットにワイドパンツ、オブジェのように構築的なレザーやニットのラップトップにフロアレングスのワンピースなど、ダイナミックなデザインが揃う。しぼみかけた風船のように空気を含んだコートやドレスと並ぶキーアイテムは、靴まですっぽりと包み込むパンツ。美しいフォルムで描く切れ味のいいデザインが揃った。まだらなシルバーブラウンのファー以外は黒一色。

■モリー・ゴダード

Molly Goddard Fall Winter 2017 London Fashion Week  Copyright Catwalking.com 'One Time Only' Publication Editorial Use Only

 モリー・ゴダードは中央にディナーテーブルをしつらえた円形ステージで、様々な年齢の人々のパーティードレスを揃えた。チュールのティアードドレスをシグネチャーとするゴダードにとっては直球なテーマだ。目がさめるような鮮やかなブルーで染めたボリュームたっぷりのティアードチュールドレス、膨らむスカートに花刺繍をのせたギャザードレープ使いのドレス、胸元にスモック刺繍したバルーンスリーブのベビードールドレスにはグリッターに輝くシルバータイツを合わせる。プリントTシャツにチュールのスカートを合わせ、バッグを斜め掛けするスタイルはティーンエイジャー風。 鮮やかな色を多用したダイナミックなスタイルが揃った。

■ヴェルサス・ヴェルサーチ

Versus Fall Winter 2017 London Fashion Week Copyright Catwalking.com 'One Time Only' Publication Editorial Use Only

 ヴェルサス・ヴェルサーチは、スポーツやバイカースタイルを背景にしてエッジの利いたラインを揃えた。ジップをアクセントにした黒のミニドレスやセットアップは、タイトなシルエットの中にショルダーから袖にボリュームをとる。ショルダーやエルボーを切り替えて、ライダーズジャケットのようなディテールを加える。ドローコードを絞ったN-2Bのようなフライトジャケット、ボルドーとブラックのジャージーを切り替えたドレスやセットアップへ続く。ショーの後半はブラックに鮮やかなピンクやブルーを組み合わせたスタイル。黒いタイトドレスは縦にピンクのテープがトリミングされ、へアリーニットはピンクとブルーがアブストラクトに切り替えられた。

(写真=catwalking.com)



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