東洋紡、サントリーなど12社 プラスチック再生事業で新会社

2020/07/02 06:30 更新


結成を呼び掛けたサントリーホールディングス新浪社長(中央)、東洋紡の楢原社長(右端)ら

 東洋紡、サントリー、大日本印刷、岩谷産業など12社は共同出資で、新たなプラスチックリサイクルの事業化を目指すアールプラスジャパン(東京)を設立した。現在、多くが焼却処理されている包装容器などの使用済みプラスチックを、分別しない混合処理によって原料に戻すケミカルプロセスを確立し、27年の実用化を目指す。

(中村恵生)

 6月30日に出資企業の代表らが出席し、オンライン会見を開いた。結成の声掛け役となったサントリーホールディングスの新浪剛史社長は、「プラスチック問題は先送りできない世界的課題。これに対し、日本からテクノロジーの切り口で解決していくのが新会社の狙い。賛同する出資企業を今後も広く募っていきたい」と展望を語った。

 出資企業の代表としてあいさつした東洋紡の楢原誠慈社長は、「当社を作った渋沢栄一は『世のなかの課題解決に貢献することをやっていく』と考えていた。現在は食品包装フィルムなどプラスチック事業を主力とし、課題解決の責任を痛感している。今回の画期的な技術の可能性を感じており、実用化に貢献していきたい」と話した。

 米国のバイオ化学ベンチャー、アネロテック(ニューヨーク州パールリバー)がキーとなる技術を保有しており、サントリーなどと100%植物由来のペットボトルを開発する中で再資源化に応用できると注目し、検証テストで実用化の手応えをつかんだ。アールプラスジャパンはアネロテックによる開発を支援し、実用化へとつなげる。

米・アネロテックの技術を実用化につなげる。写真はバイオベースポリエステルのパイロットプラント

 アネロテックの持つ技術は、ウッドチップを熱分解し、触媒反応によって粗原料のキシレンを製造、重合してPET(ポリエチレンテレフタレート)を製造するもの。これを応用したケミカルリサイクルは、さまざまな合成樹脂でできた使用済みプラスチック製品から、熱分解、触媒反応によってエチレン、プロピレン、キシレン、ベンゼン、トルエンといった粗原料を取り出し、これを再びポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル製品に利用する。

 従来のケミカルリサイクル技術では、使用済みプラスチックを熱分解で油化した後、原料化する2工程が必要だったが、アネロテック技術では1工程で済み、リサイクルにかかるエネルギーやコストを抑えられる。原料確保の値段などにも左右されるが、「今の試算では、十分にコスト競争力がある。ポリエステルでは繊維用途でも展開できる」(横井恒彦アールプラスジャパン社長)という。

分別されていないプラスチックごみから粗原料を作り、製品にリサイクルする

 実用化への課題は、触媒の最適化や前処理などの条件設定。分別しない混合状態での処理を想定しているため、プラスチックごみの組成などを検証し、最適なプロセスを検討する。アールプラスジャパンは技術確立して特許化し、ライセンス収入でマネタイズする計画。27年には国内で実用化プラントの立ち上げを目指す。

 アールプラスジャパンにはレンゴー、アサヒグループホールディングス、凸版印刷など多様な業種の企業が参画した。現在、住友化学が出資を検討中で、このほか数十社にも参加を呼び掛けているという。また東洋紡から、久保田冬彦参与リニューアブル・リソース事業開発部長が取締役に就任した。

さまざまな業種の12社が参加。今後も多くの企業の参画を募る


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