【ニュース2021⑦】コロナ下で売れたモノ 新たな生活様式、価値観の変化に対応

2021/12/31 06:28 更新


 コロナ下でファッション消費全般の厳しさは続いているが、ヒット商品がなかったわけではない。ニューノーマル時代の生活様式や価値観の変化に対応した商品開発で新たな需要を喚起し、さらなる市場拡大が期待できるモノも出てきた。

新たな仕事着の需要

 男性の仕事着が代表的だ。テレワークやリモートワークなどの浸透による働き方の激変でスーツ離れに拍車がかかり、従来型の既製スーツ市場を大幅に縮小させた。コロナ前と比べスーツの販売数量が半減した企業もある。一方で、在宅ワークも含めた多様なビジネススタイルをチャンスととらえ、開発されたのがAOKIの「パジャマスーツ」。ネーミングの通り、パジャマのリラックス感とスーツのきちんと感を併せ持つ商品として支持された。昨年11月から販売を開始し、今夏時点で累計販売着数3万着を突破。「緊急事態宣言」解除後も伸びており、12月中旬には8万着に迫る勢いだという。同社はパジャマスーツを軸にしたカジュアル領域の年間売上高を今後3年で100億円以上に引き上げる戦略を掲げる。以前から人気の高機能なセットアップスーツの定着に加え、ワークマンのワークスーツでの新規参入などもあり、オフィススタイルの多様化、カジュアル化を止めることはできないだろう。

テレワークなど働き方の変化に対応して人気となった「パジャマスーツ」

ゴルフブームも

 外出自粛で大打撃を受けたファッションビジネスと違い、キャンプブームの勢いが衰えることはない。コロナ以前から野外フェスなどとともに盛り上がっていたアウトドア業界だったが、ここ数年はさまざまな異業種からの新規参入もとどまることなく広がっている。ギアやウェアなどの物販のみならず、キャンプ場の運営に乗り出す企業も増えている。同様に野外で楽しむ趣味やスポーツは引き続き人気だ。特に若い世代が新たに参加し始めたゴルフ市場は近年にない盛況ぶりだ。コロナ下にゴルフウェアの新ブランドは続々と生まれている。既存のスポーツメーカーの商品には飽き足らない客層に向けたファッション性の強いブランドが新たなファンを獲得している。元々、ゴルフと親和性が高い顧客に支えられてきた老舗メンズブランドでも相次いでゴルフの新ラインを出している。一過性のブームで終わるかどうかは、若い世代が定着するかどうかにかかっているだろう。

 全般的に消費マインドが冷え込む中でも、堅調だったのは富裕層を中心としたラグジュアリー市場だ。マーケットの二極化はますます進み、中間価格帯の衣料品の消費はさらに先細りしていきそうだ。こうした厳しい市場でも新たなヒットの芽は生まれてきている。際立っていたのは「フェムテック」関連。女性が抱える健康の課題を解決する商品開発が盛んで、その市場のさらなる広がりが見込まれる。大きな転換期だからこそ、消費の変化を機敏にとらえた商品開発が求められる。

(繊研新聞本紙21年12月28日付)



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