伊藤忠商事は、化粧品に特化したECプラットフォーム「NOIN」(ノイン)を運営するノイン(東京)が第三者割当増資により発行する株式の一部を引き受けることに合意した。化粧品分野を強化している伊藤忠にとって、拡大が見込まれる化粧品ECは重要な販売チャネルの一つ。ノインにとっても、ブランドビジネスを強みとする伊藤忠と協業し、日本未上陸の新規ブランドの導入や、ファッションブランドの化粧品ライセンスビジネスなど事業拡大に向けてシナジーを期待する。
ノインは17年10月に化粧品ECを始め、アプリのダウンロード数は250万を突破。日本の大手化粧品メーカーのブランドや、昨今人気の韓国ブランドも扱うなどして約9000SKU(在庫最小管理単位)を揃え、10~20代女性を中心にユーザーが増えている。化粧品に特化した情報発信も強みで、インスタグラムのフォロワー数は25万。今春からは、ECを通じて蓄積してきた購買データを活用し、メーカーのマーケティングを支援するサービスも始め、事業の拡大を加速している。当面の目標は流通総額1000億円という。
伊藤忠は「商いの次世代化」を目指す事業活動の一環で、繊維カンパニーではブランドビジネスのEC拡大、新流通チャネルへの参入に取り組んでいる。アパレルや靴、バッグなど既存のブランドビジネスとともに、「成長性の高い市場」として化粧品も一つの柱として育てていく方針を掲げる。同社は化粧品市場におけるEC比率がアパレルより低いことに着目。「これから伸びるポテンシャルがある」と指摘する。化粧品メーカーもECに力を入れている上、新型コロナウイルスの影響でその傾向はより強まっているもよう。
伊藤忠は既に新規ブランドの導入や、ファッションブランドの化粧品ライセンスについて複数案件で検討を進めている。ノインとの協業で「出口(販売チャネル)を明確に提示できることは強み。交渉がしやすくなる」という。ノインのデータマーケティング力も大きな魅力に感じており、「データに基づいてブランド導入の検討ができる」。5、6月をめどに伊藤忠からノインへ1人出向させる予定。より高いシナジーを出せるよう化粧品ECの現場に送り込み、情報収集に努める。