繊維機械見本市のITMAアジア 差別化機へ活発な商談

2018/10/18 06:25 更新


 【上海=中村恵生】中国の繊維製造業が転換期を迎える中、日本や欧州の繊維機械メーカーにはチャンスが到来している。環境規制の強まりや人件費の上昇などを受けて低価格・大量生産の物作りが縮小し、高付加価値シフトが進んでいるためだ。15日から上海で開かれている国際繊維機械見本市のITMAアジア+CITMEでは、これら差別化機の活発な商談が行われている。19日まで。

 織機メーカーの津田駒工業は今年に入って中国向けの販売が好調だ。もともと同社にとって中国は最重要市場だが、ここ数年はインドが成長し、中国を上回っていた。ところが今年は再び中国向けが盛り返し、納期も7、8カ月待ちと供給が追いつかない状況だ。

 きっかけは昨年から中国で強まっている環境規制だ。例えば、テキスタイル産地の蘇州市呉江区では染色業だけでなく、地元政府が今後3年で水を使用するウォータージェット織機を34万台から24万台に減らすとの方針を示し、工場の操業停止が進んでいる。山東省や安徽省といった周辺エリアへの移転も計画されるが、同時に織物業そのものが高付加価値型へと転換しつつあるという。

 津田駒では、ウォータジェットで上下二つのビームを搭載し、2種類の経糸を組み合わせられる織機が好評。また緯糸もストレッチや細デニール糸など、2種以上の対応が求められている。省人化ニーズも高まっており、緯糸の詰まりが発生した際の自動補修装置も要望が増す。人海戦術が当たり前だった以前の中国にはなかった動きという。

 編み機メーカーの伊・ロナティグループは、ITMAアジアの出だし2日間で1500台を受注した。中国向けで、自動リンキング機構を搭載した靴下編み機「SbyS」が大半を占める。「大手の有力客が来場し、新工場建設などの大型案件も来ている」(アンドレア・トメアッツィ極東地区セールスマネジャー)。

 リンキングはつま先を仕上げる縫製方法の一つで、編み目を拾って縫うことでフラットになり、履き心地向上につながる。ただし人手がかかるため、人件費上昇や人手不足により、中国でも自動リンキング編み機のニーズが向上している。地場には安いコピーメーカーも存在するが、同社は「安定生産ができ、機械そのものも長寿命」なため、少々高くても投資メリットが理解されているという。

 染色関連では、節水や省エネルギーにつながるデジタルプリントの提案が活発だ。この間、ロータリースクリーンに代わる高速生産機としてシングルパス式プリンターが欧州や日本のメーカーから出されているが、広東美嘉(MEIJIA)、彩神(FLORA)といった中国メーカーからも続々と登場している。

 このほか、後処理が乾燥だけで済み、染料プリントで必要な蒸しや洗いが不要な顔料プリントも広がっている。イスラエルのコーニットが先行しているが、伊・EFIレジャーニ、広東希望高科(ホープテック)、彩神など各国メーカーが力を入れている。

高付加価値な織機のニーズが高まっている津田駒工業


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