「ハルノブムラタ」(村田晴信)は8月27日、東京・国立新美術館の1階ホールで25年春夏のショーを単独で行った。
昨シーズンもショーの演奏曲として使っていた現代音楽家キリル・リヒターによるピアノの生演奏とともにショーは始まった。起伏のあるメロディーのなかで、造形性を主張したドレスをまとうモデルが登場する。ベアトップドレスのバスト部分の布を折り返してひねって立体的な袖を作ったり、ラウンドカットした生地で体を包み、片方の腕を開放したり。一枚の布を生かすシンプルな造形によって、女性の体の美しさを素直に感じさせる。
インスピレーション源は彫刻家ブランクーシの思想だ。「彫刻的なアプローチで人間の本質を捉えることに着目した」と村田。バストから流れ落ちるジョーゼットが抑揚のあるラッフルを描くドレス、左ウエストにドレープを寄せたノースリーブのドレス。しなる布で凹凸に富んだシルエットを作る。
プリント生地は使わずに、造形と素材の質感で構成するコレクション。銀箔(ぎんぱく)を硫化させてメタリックなグラデーションの色彩を帯びた生地を切り替えたドレスや楕円(だえん)形にカットしたトップは迫力があるのだが、既視感のあるディテールのドレスが気にかかる。
(須田渉美、写真は加茂ヒロユキ)