今日からFB業界で働くあなたへ 相手を思う気持ちを

2018/04/02 04:30 更新


 ファッションは多くの人を幸せにし、心を豊かにしてきました。そしてこれからも、ファッションの輝きは失われないでしょう。デザインを創造し、培った技術で作り上げ、心を込めて販売する。その営みは多くの人を引きつけ、多くの人に感動を与えるからです。

 では、AI(人工知能)に、人を感動させるデザインや接客ができるのでしょうか。人の心を豊かにし、幸せな気持ちにさせることができるのでしょうか。

 今日からファッションビジネス(FB)で働くあなたに考えてもらいたいのです。

 AIの進歩は目覚ましく、囲碁や将棋でトッププロを破るまでになりました。洋服のパターンを描いたり、お客様とやりとりしながらお気に入りの洋服を薦めたり、AIはそんなこともやってくれます。今、AIの作るパターンや会話に思いやりは遊びはありませんが、将来、AIが感性や創造性を持ち、人を感動させるようになるのでしょうか。

 感動は、心への働きかけで生まれます。思いがけず心のこもった応対を受けると、うれしい気持ちがやがて感動に変わります。素晴らしいものを見たり、聴いたりすると、心が揺さぶられます。

 AIは人の心は持ちませんが、どうすれば人が喜ぶか、どういうものに人は心を動かされるかを教えておけば、AIは最適な行為を予測し、実行することでしょう。

 あなたは仕事にどう向き合いますか。身に着ける人のこと、どういう場面で誰とどんな時を過ごすのかを想像しながら、一着ずつ、一点ずつ、心を込めて、次の人に手渡そうとしているはずです。その思いは、仕事に向き合うあなたの心を豊かにし、その気持ちは人から人へと伝わり、身に着ける人に届くのです。

 大切なのは、相手の喜ぶ顔、幸せな気持ちを想像すること。相手を思う気持ちが、相手の心に働きかけ、人は感動するのです。ところがAIにできるのは、想像ではなく予測。喜ぶ顔を想像しているのではなく、データに基づいて予測しているのです。そこに人を感動させる要素はあるでしょうか。AIには決してできない相手を思う気持ちがファッションビジネスの本質なのです。

 勝ち負けのある囲碁、将棋の世界ならAIは能力を発揮するでしょう。勝つためのプログラムがあるからです。でも、人を感動させることに勝ちも負けもありません。人を感動させるためのプログラムなど存在しないのです。

 相手を思う気持ちをAIによって増幅させることならできるでしょう。AIが進歩しても、相手を気遣い、思う気持ちがある限り、あなたはファッションビジネスの主役であり続けるのです。

 今、あなたが手にしている1本の糸、1枚の生地、1着の服。多くの人が、手から手へ大切に受けつなぎ、あなたのもとに届きました。今日からあなたも、かけがえのない仲間の1人です。手にしているものを次の人に手渡してください。次の人も同じように大切に次の人に渡すでしょう。みんなの思いはただひとつ。「身に着けた人に喜んでもらいたい」。喜ぶ顔を想像することで、心はつながり、豊かな仕事ができあがるのです。



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