【ロンドン=小笠原拓郎、若月美奈通信員】19~20年秋冬ロンドン・コレクションは伝統的な柄の新しい表現、フェザー刺繍やキルティングといったテクニックが目立つ。
英国調の柄にラメプリントやグラデーションカラーをのせ、フェザー刺繍はフリルと重ねたり、ヘムラインを飾ったり。キルティングは膨れジャカードとシンクロするように多彩な表現が広がった。
(写真=ジェイ・ダブリュー・アンダーソンは大原広和、アーデムとロクサンダはcatwalking.com提供)
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ジェイ・ダブリュー・アンダーソンのショー会場に入ると、白いじゅうたんで作られた枯山水の空間ができている。その四角い空間にジョナサン得意の抽象的なフォルムが現れる。ここ数年の股から膝にかけての位置にポイントを置いた縦長シルエットと比べると、軽やかになっているのが特徴。
シースドレスは胸元とヘムに穴を開けて、しわ感のあるストール状の布を通していく。レースアップのように揺れ動くその布が、チュールをアンクルに巻きつけたサンダルとともにリズミカルに弾む。布の動きに意識がいくコレクション。
チェックコートにはアブストラクトにスクエア布が揺れ、ドットドレスはヘムを折り返してボディーに重ねてふんわりとしたラインを描く。ダブルフェイスのケープは緩やかなAラインのほか、封筒を折り畳んだようなスクエアフォルムのコンセプチュアルなライン。頭の上にちょこんと乗っかったヘルメットのような乗馬キャップとともに、その帽子の形をしたバッグも出している。
枯山水のセットからどんなジャポニズムが登場するかと思いきや、そこまで日本を感じさせるものはなく、コンセプチュアルなアイテムもあるけれど軽やかなラインが増えて、ウェアラブルになった。
アーデムはノスタルジックな雰囲気はそのままに、これまでよりシンプルなストレートシルエットのアイテムを充実させた。ビジュー刺繍、レース、ツイード、花柄のラメジャカードにラメチェック。きらびやかな装飾とクラシカルな生地が重なりあい、英国の伝統を背景にしたアーデムの世界を作っていく。
ノスタルジックなアクセントを作るのは襟元のディテール。エリザベスカラーやピエロカラー、あるいは黒のグログランをボウ飾りしたりバックに流してドレープを作ったり。
ストレートシルエットの軸になるのはツイードにビジュー刺繍したパンツスーツやストレートドレス。ドレスをメインにしたブランドはたくさんあるが、このノスタルジックなムードはアーデムならでは。そこが人気の秘密であろう。
ロクサンダの会場は砂漠のような細かな砂が敷き詰められている。その白い砂にブルーやパープルの淡い色が差し込む中、ロクサンダらしい縦長のボリュームラインが登場する。
ギャザーで袖を膨らませたトップにフリルでボリュームを作ったトレーンドレス。襟周りにギャザーを寄せて身頃をバイアスストライプに切り替えたドレス、深い襟ぐりでデコルテを強調したドレスはフェザー刺繍で動きを作る。ブラウン、ピンク、ブルー、オレンジ、イエロー。砂漠の乾いたムードと明るい色がシンクロする。
ドレスの一方でペグトップのパンツスーツも出しているが、そちらはちょっとマチュアに振れすぎか。大きな量感のドレススタイルはロクサンダのアイコンといえるが、こればかりだと着られる客層が限られてビジネス的には厳しい。その軸を守りながら、どう新たなステップに踏み出せるのかが問われている。