【ミラノ=小笠原拓郎、青木規子】18~19年秋冬ミラノ・コレクションは、量感のあるコートやブルゾンのバリエーションが充実した。ボアやシャギーのもこもことした質感、ネップツイードの温かな膨らみ。ボリュームを生かしながら、透ける素材を重ね、透明なビーズを刺繍して、フェミニンなスタイルに仕上げている。
(写真=大原広和)
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宵闇に浮かび上がるバナナやゴリラのネオン。そのネオンサインを目印に進んでいくと新しくできたフォンダシオン・プラダのタワーにたどり着く。建物は8階建て。階段か大きなエレベーターでそれぞれの指定されたフロアへと向かう。大きな窓からは隣の広大な空き地に立てられたネオンサインを見下ろすことができる。
イルミネーションが雨粒をたたえた窓ににじんで光が反射する。そんな光をまとうかのように、アブストラクトなイルミネーション柄や花柄がドレスにのせられる。プラダが見せたのは鮮やかなネオンカラーとブラックナイロン、量感と透け感を組み合わせたスタイル。女性らしさを象徴するチュールとともに、それをプロテクトするパッデッドアイテムのボリュームがコントラストを描く。
1月のメンズコレクションの流れをくむかのように黒いパッデッドジャケットが登場し、胸元にはメンズと同じ倉庫の作業員が付ける写真付きのICタグ。しかし大きく違うのは、背中には大きなリボンを飾り、チュール刺繍のドレスとともに運んでくる繊細な女性らしさ。ツイードやメルトンのメンズライクな重厚な素材も、ピンクやグリーンのフラッシュカラーと組み合わせるとポップで軽やかに見えてくる。
トップはショート丈なのにボリューム感があって、シャツをアウターにしたかのようなオープンカラーの抜けた襟ぐりが可愛いバランス。泥よけの布が付いたワークブーツも、工業製品のプロダクトのようなイメージ。そんなワークやスポーツをポップでフェミニンに取り入れたスタイルが秋冬の核となる。
1月のメンズコレクションに見られたように、レディスにもアーカイブからの引用は垣間見られる。冒頭のブラックナイロンのパッデッドアイテムもそうだが、ファイアパターンをかたどったパンプスやプラダスポーツの赤いロゴ、バナナプリントのバッグといったアイテムがそうだ。しかし、メンズコレクションと違って、今回はかつて見たアーカイブの懐かしさというよりも、ケミカルな素材と色、ボリュームを組み合わせたレイヤードの楽しさが先にくる。そのバランス感に色濃くミウッチャ・プラダのスタイルを投影しながらも、ぎゅっとエッジが立ってかつ楽しい。
この間、アレッサンドロ・ミケーレのグッチに押されまくっていたプラダだが、久しぶりのスマッシュヒットで大きく巻き返しそうだ。