ネ・ネット 「スターハントキャラバン」企画スタート

2018/12/20 11:00 更新


 エイ・ネットの「ネ・ネット」は18~19年秋冬から、日本の産地に焦点を当てる企画「スターハントキャラバン」をスタートした。シーズンごとに、糸や生地、加工など産地の特色を生かした商品を作り、販売する。主役はテキスタイル。百貨店での期間限定店や一部店舗を巡回して、「ワクワクを感じる物作り」を発信する。

 ネ・ネットは今年で13年目。デビュー当時は100%国内生産だった。10年でブランドが大きくなり、40店以上を構える規模になったため、一時は生産のほとんどを中国にシフト。大量生産するようになり、価格帯は下がった。

 「一生懸命作った物がセールになって、次のシーズンが始まる。ブランドが大きくなるのと同時にそのサイクルが早くなり、これでいいのかという気持ちが強まった。これから10年、20年続けることを考えて、一度立ち止まって店や物作りの規模を小さくして、日本の産地を軸に改めてスタートしたかった」とデザイナーの髙島一精。

 現在の生産比率は日本と中国が半々。今後はデビュー当時と同様に、全てを国内生産に戻す方針だ。「以前と違って、中国と日本の工賃は、やり方を考えれば大差がない。クオリティーを理解している人に良い商品を届けるために、目の届く範囲で物作りがしたい」という。国内産地での生産を再開したことが、今回の企画につながった。

 第1弾でクローズアップしたのは、国内トップの毛織物産地の尾州(愛知)。ファンシーツイードを得意とする機屋と組んでラップスカートを作った。生地は新たに作るのではなく、機屋にあった試織反の中から、ファンシーヤーンやリボンテープを織り交ぜた生地など約20種類をピックアップした。

 中にはネ・ネットが昔作ったユニークな試織反もあるという。ラップスカートは、素材の魅力が全面に出るようにシンプルな形にこだわっており、大判のストールとしても使える。

尾州のテキスタイルを使ったスカートにもショールにもなる「スカショー」2万3000円
尾州のテキスタイルを使ったスカートにもショールにもなる「スカショー」2万3000円

 今期は名古屋と池袋を巡回中だ。10月にJR名古屋高島屋で行ったイベントには、テキスタイル好きな女性や地域密着型の人が、興奮しながら吸い寄せられるように店に集まってきた。年齢層は40~60代。「こういう服が少なくなった」という声が多く、「ファションを買うことに貪欲な人は少なくない」と実感したという。

 西武池袋本店3階では31日まで、メインコレクションとともにイベント開催中。売れ行きも好調で、すでに予算を上回った。新しい客層へのアプローチが進んでいるという。

 第2弾は、綿の先染めシャツ地を得意とする西脇(兵庫)とともに、いろんな柄のブロードやローンを組み合わせてシャツやトランクスを作る。19年3月から5月に販売予定。店頭では産地の魅力も発信する。

西脇の先染めコットンで仕立てたシャツ1万7000円
西脇の生地を使ったトランクス、5000円

 その後の企画も進んでいる。第3弾の19~20年秋冬は、18年の西日本豪雨災害で被害にあった岡山のデニム産地と取り組む。泥水に浸かってしまった反物を、製品としてよみがえらせる企画を思案中だ。第4弾の20年春夏は桐生と取り組む。

 「エイ・ネットは物作りの会社だから生き残れた。でも現状は、スタッフすら日本の良い素材を知りません。僕は三宅さんと良い生地を見て回ったことで経験を培った。これからは若い人と産地を回って、改めて勉強したいです。糸から選んで作る楽しさを、若い人にも伝えたい」(髙島)。



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