読者の声



 繊研新聞に僕の名前が初めて載ったのは、繊研主催のコンテストの受賞記事です。舞台衣装みたいな作品が多いなか、さらっと作ったのが良かったようです。87年、桑沢(デザイン研究所)の2年でした。DCブランドが頂点を極めた時期で、ファッションは学生にとって花形。自分の実力が分からなかったので、力試しがしたかったんです。

 卒業後は、帰りの航空券を持たずにイタリアへ。留学ではなく、いきなり行きました。働いたのは「ロメオ・ジリ」。事務所があったコルソ・コモのあたりは、街はずれの新しいスポットで、日本のファッション関係者もよく来ていて、繊研の記者にも気にかけてもらいました。

 繊研を読み始めたのは、東京に戻ってブランドを立ち上げてから。今は電子版を読んでいます。ネット上では誰でも情報が適当に拾える時代ですが、そのほとんどはほかの媒体をコピペした情報です。しっかりビジョンを持って書いているのは3、4紙。繊研も真面目な取材をされていて、ずっと中立な感じがします。そういうところが信頼につながっているんだと思う。

 繊研には老舗感やオーソリティーな感じがある。過去がない人はそれを強みにはできません。でも常に革新しないと現状維持できない。時代の流れでしょう。ファッション業界で働く人の目線を大切に、背景や構造を掘り下げた情報と、「この業界で働いていてよかった」と思えるような記事を期待しています。

研壁さんがスクラップしていた繊研主催のコンテスト受賞を報じた記事

(繊研新聞本紙23年7月20日付)