アーティストの高橋理子氏は最新作「DAZZLES」(装光庵第八理子丸)を発表した。デコトラの荷台に本格的な茶室を設けた移動式の大型インスタレーションで、「認識の境界を越える移動する思考空間」をコンセプトに掲げる。
高橋氏はこれまで「円」と「直線」という限られた要素を起点に、多様な表現や解釈の可能性を探求してきた。今回の作品では、その探求を空間へと展開。デコトラと茶室を組み合わせること自体を目的とするのではなく、自身の表現として長年向き合ってきたデコトラと、必然的にたどり着いた茶室が共存する場として制作した。人が未知と出合い、自らの世界を広げるための文化を育む場と位置付けている。
制作に当たって、新たな車両を用いるのではなく、長年走り続けてきたデコトラを活用した。車体に描かれていた白虎や大蛇の絵を完全に消さず、自身のステートメントを重ねることで異なる時間が一つの画面に共存する表現を試みた。茶道具やきものにも古いものを再生して用いるなど「時間を重ねる」という考え方が作品全体に反映している。
作品名の「DAZZLES」は、「目をくらませる」「幻惑する」を意味する英語「dazzle」に由来する。第1次世界大戦時の「ダズル迷彩」が、対象を隠すのではなく認識を揺さぶるために考案されたことにも着想を得た。見る人によって異なる解釈を生み出し続けることを意図している。
茶室「装光庵」は裏千家正教授の北見宗幸氏が監修を担当。6月には約90人を迎えた席開きを実施した。高橋氏は同作品を完成形ではなく、人との出会いや対話を重ねながら意味を更新し続けるプロジェクトと位置付けており、すでに「DAZZLES」シリーズ第2作目の制作も進めている。
高橋氏はきものを芸術的媒体として再定義し、ドローイングから建築的スケールのインスタレーションまで幅広く手掛ける。作品は国内外の美術館に収蔵されるほか、アディダスやBMW、イケアなどとの協業実績も持つ。
