デザイナーの井野将之氏が手掛ける「ダブレット」は、かばんメーカー、吉田の「POTR」(ピー・オー・ティー・アール)と初の協業品を数量限定で販売開始した。東京・表参道の「ポーター」旗艦店など直営店を中心にした販売に先駆け、両社に縁が深い群馬・桐生を拠点とするセレクトショップ「エスティーカンパニー」でローンチイベントを開いた。
今回の協業では、昔の音楽CDにあった両A面のように、両方が主役のバッグを作った。両A面のバッグは前後でリュックとドラム型とデザインが異なり、色も黒、ピンク、カーキに変わる。前と後ろを固定せず、視点を反転させることで、新しい表情が生まれ、その日の気分や装いにも合わせられる。税込み8万8000円。同じコンセプトで企画したTシャツも前後で色やグラフィックが異なる。半袖で2万7500円、3万1900円。長袖で3万5200円。

イベントではダブレットのデザイナーである井野氏と吉田の常務でブランドディレクターの松原賢一郎氏によるトークショーを開催。今回の協業のきっかけや発想源、物作りのプロセス、エスティーカンパニーで開催した理由などを話した。平日の夜にもかかわらず、会場には地元だけでなく東京など首都圏から50人以上のファンが集まった。
――協業のきっかけは。
松原 吉田の元社員がダブレットに転職して3年前から協業の依頼を受け、今回、ライフスタイル提案型のバッグブランドPOTRで実現しました。
――アイデアはどこから。
井野 最初の打ち合わせでは、力が入り過ぎて奇想天外なアイデアばかり出していました。次に表参道の旗艦店でミーティングをした際、「立ち姿が美しいのが良いかばんだ」と説明を受け、だったら「不安定なかばんを作りたい」とリュックとショルダーとトートの三つを合体したバッグを提案しました。吉田側で熱量の高い論議を重ね、職人と相談した結果、「コストが高くなるし使い勝手が良くない」と、最終的に二つを合体することにしました。
松原 手間がかかると工賃も上がります。今回の協業は小さいバッグですが2個分をしっかり作り込んでいるので工賃も2倍になります。合体という普段使わない技術も加えたので、なおさらです。リュックなどの形は当社の定番をベースにしています。普段から物作りに臨む場合は、①自分がやりたいこと②職人に継続的な仕事を出す③お客様に選んでもらえるなど3点それぞれのバランスを意識しています。
――協業品の見せ方・伝え方は。
井野 協業のコンセプトに合わせて前後で顔も服装も異なる両A面型の人形を有名な特殊メイクのチームに依頼して作りました。メインのバッグがより多くの人に伝わるよう、モデルの人形に協業Tシャツも着せてムービーを制作しました。

――イベントに地方の個店を選んだのは。
井野 当初、自分の出身地なので慎重になり過ぎて、群馬県に卸し先がありませんでした。エスティーカンパニーを知り、17年に店舗を突撃し、環敏夫代表と2時間話して、店舗はもちろん、人柄にほれ込み取引につながりました。その後、ダブレットのオリジナル什器を作ってもらうなど応援してもらっています。
松原 コロナ下でかばんの需要が激減した時期に「自分たちで新たな販路を開拓しなければ事業が続かなくなる」との危機感から、厳選した地方のセレクトショップへ営業をかけ、自分たちが作った什器を持ち込み、期間限定店を開いた一つがエスティーカンパニーでした。その後何度も期間限定店を開催。また、「ポーター」の新生「タンカー」シリーズの限られた卸し先として取り組みが続いています。今回のイベントで、作り手が使い手にダイレクトに思いを伝える場として、顧客との信頼関係が深い個店が最適だと実感できました。
