【彼らはなぜ愛されるのか】ロングセラーブランドに聞く 信頼され続けることの大切さ


 女性たちに長年愛され、商業施設でも広く認知されているブランドは、いかにして自分たちらしさを築き上げてきたのか。それぞれの事業担当者の話から、代わりのきかないブランドとして信頼され続けるための条件を探った。

INDIVI  インディヴィ

品質、品格、価格を軸に店頭の声も

 「インディヴィ」(フィールズインターナショナル)は、百貨店キャリアブランドとしての品質、品格とフロア内では買いやすい価格ポジションを軸とし、働く女性に支持されている。具体的には着心地が良い、手入れがしやすい、体形が細く見える、長く着られる、あらたまった場でも安心といったことがポイントだ。接客については、“日本一感じの良いスタッフ”であることを心がけている。

 こうしたブランドであるため「お客様の声に応え、信頼を裏切らないように活動してきた」と丸山紀之取締役ニューキャリアユニット長。商品に関するお客の声を集め、月に1回、丸一日をかけて社内で話し合う。一部を除いて「ほぼ全ての声を取り入れ」、丈の長さや素材など翌年以降の企画を改善している。ダウンコートのファーの取り付け方に関するあるお客の要望を商品に反映したところ、新作コートを手にしたその女性が「私の言ったことが直っている」と気がついてくれたという。思いが届き合っているという実感も、ブランドと顧客の信頼につながっている。


 マーケットインの発想を持ちながらも、それはあくまでブランドに肉付けするイメージだ。冒頭の自分たちの軸を確立した上で店頭の声を取り入れているからこそ、インディヴィらしさはブレない。「お客様の数が増えること」をブランド運営の指標とし、15年秋冬以降は客数、売り上げともに好調を維持、百貨店キャリアフロア内でのシェアを着実に獲得している。

Spick & Span スピック&スパン

大人カジュアルを表現する幅の広さ

 17年に30周年を迎えたセレクトショップ「スピック&スパン」(フレームワークス)は、18年春夏からリブランディングを始めた。最近は通勤着やOL向けのイメージが強かったが、「本来はカジュアルなブランド」と窪田昌央スピック&スパンディレクター。そこから派生し通勤着を扱う「ノーブル」業態と役割をすみ分ける意味でも、改めてチャーミングで可愛らしさのある大人カジュアルを打ち出した。

 とはいえ急に真逆のテイストに振るわけではない。例えばカジュアルを象徴するデニム商品は従来から得意とし、引き続き強化する。仕事で使えるアイテムは型数を絞りつつ数量の奥行きをつけた。ポイントはスタイリング。デニムパンツにフェミニンなブラウスとパンプスなどのミックス感で大人カジュアルを表現する。春以降はカジュアルをベースにしながらも、スタイリングの幅を出すことに注力、修正を繰り返した。

 OL層にも支持されていることから、彼女たちが試してみようと思える程よいトレンド感、リアルさも重要だ。「スピック&スパンに行けば何かあると思って必ず立ち寄りたくなるブランドでありたい」。各店舗の客層に応じてMDを使い分けることも検討する。リブランディングのほか、商品開発・発注の精度向上、EC、SNSの強化なども奏功し、18年春夏の店舗・ECの売り上げも前年同期比約30%増ペースと好調だ。秋~来春に店舗のリニューアルも予定し、ブランドイメージをさらに引き上げる。


NOLLEY'S ノーリーズ

さりげなさや安心感は世代を超える

 37年の歴史を持つセレクトショップ「ノーリーズ」(ノーリーズ)は、2世代、3世代で利用する人、各地のノーリーズ店舗で買い回りする人、ずっと同じ形の商品を愛用している人など濃いリピーターに支えられている。センタープレスの細身のパンツは長年作り続けているアイテムの一つだ。

 なぜ1人の人に長く支持されるのか。「うちはすごくトレンドを追った店ではないが、シンプルでさりげないおしゃれやスタイリングの分かりやすさ、さわやかさ、安心感を大事にしている」と大岩平和代表取締役副社長兼ノーリーズ事業本部部長。ニットも素材、価格含めて強みといえるアイテムだ。安心して買ってもらえる品質とそれに対する価格設定にこだわり、「この商品は何円だったらお客様が喜んでくれるのかといった議論も追求している」。物の良さを分かっているお客は多い。


 だからこそ、学校行事や友人との集まりなど何か特別なシーンに着る服が必要なとき、「ノーリーズに来ればきっとある」と頼られる存在でもある。閉店ギリギリや朝一番で駆け込んでくるお客も多いため、消費者がほしいときにほしい商品をきちんと揃えられる運営体制の強化も重要だ。

 さりげなさや安心感がブランドの魅力だからこそ、それをアピールするのは簡単ではない。どうしたらノーリーズらしさが新規客にももっと伝わるかという取り組みにも力を入れていきたいという。

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