【あのブランドはなぜ愛されるのか】あなたはブランドの価値を何で語りますか?



 今回で10号目を迎える繊研新聞レディスファッション特集は、「あのブランドはなぜ愛されるのか」というテーマを掲げた。

 最近の取材で、レディスブランドの担当者から「最近はファッションの売り場がどんどん減ってしまって・・・」という話をよく聞く。確かに百貨店やファッションビルなどの商業施設がリニューアルで飲食やコスメのショップを強化するニュースは多い。長らく館の中でメインをはっていたファッションには大きな逆風が吹いている。しかし違う角度から見れば、ファッション小売店が実店舗の新規出店に対して従来よりも慎重になり、効率化のため不採算店の退店も推し進めていることから、施設側は空いた売り場を埋めるのに苦慮しており、状況は複雑だ。

 少なくとも言えるのは、今はファッションブランド・小売店が自分たちの存在意義を問い直すタイミングにきているということだ。消費者にとって、館や卸し先にとって自分たちは何を提供するブランドなのか。他のどのブランドでもなく自分たちがそこにある価値とは何なのか――。


今回の紙面イメージ


 ビジネスの世界で大きな指標とされるのが売上高前年比だ。1年や1カ月単位の成長度合いを客観的かつ分かりやすく計れる数値であり、繊研新聞でも既存店前年比を元にした記事を多く掲載している。これからも重要な指標であることは変わらない。しかし、定量的な前年比「だけ」でブランドの良し悪しを語ることは難しい。天候やトレンドなど、ファッションは元来不安定なビジネスだ。短期的な数字の上がり下がりだけからは、ブランドの真の実力は見えてこないこともある。

 今回の特集で取材したブランドの担当者の方々には、「ブランドの価値として大切にしていることは何ですか?」ということを質問した。その答えは「品質と価格について安心して買えること」であり、「困ったときに頼りにされること」であり、「ファンを笑顔にすること」であり、「いつも体形をきれいに見せてくれること」であり、「来年も再来年もその服を着続けられること」であり、「新しい刺激を提供すること」であった。目先の売り上げを追いかけて安易なトレンド商品や自分たちらしくない商品を作っても、「やっぱり売れなかった」。試行錯誤を重ねながら自分たちが本来提供すべきこと、お客から求められていることに今まさに立ち戻ったところだ。


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 このように、大切にしている指標はブランドによってさまざまだが、多くの答えに共通しているのは「他の店ではなくここで買いたい商品を販売し、それを求める強いファンを持っていること」なのではないか。これを基準に、改めてブランドの価値を考えてみてはどうだろうか。うつろいやすい業界のなかでこういう顧客をつかんでいるブランドは、「大きく数字が跳ねることはないが、ものすごく落ち込むこともない」と、ある商業施設の担当者。こういうブランドは5年後も変わらず館にお客を運んできてくれるはずだ。

 そこで今回の特集では、ファンの期待に応え、より愛されるブランドであり続けるためのブランドのたゆまぬ努力にスポットをあてたい。あのブランドの愛される理由から、今ファッション業界が思い出すべき普遍的な信念が見えてくるだろう。そのときあなたは、自分や周りのブランドの価値を何で語るだろうか。

(レディスファッション特集チーム)

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