keyword.1 SUSTAINABLE サステイナブル
レディス企業の経営テーマとして、急速に広がっているのが「サステイナブル」だ。無料ショッピングバッグの廃止やエコ素材を使った商品開発、在庫量適正化による粗利益改善や物流コスト削減などが挙げられる。地球環境への配慮はもちろん、今後は広義の意味でも“持続可能な”ビジネスモデルを築くことが、消費者に選ばれ続けるブランドの条件となりそうだ。
おしゃれなエコ素材開発が広げる可能性
持続可能なファッションビジネスのあり方が模索される中、初めの一歩となっているのが「素材」だ。原料の特性や製造方法で自然環境に配慮した“エコ素材”に関心が高まっている。
日本の素材企業では以前から、省資源や環境負荷の軽減に取り組んできた。しかし、昨今のムーブメントを受け、再びエコ素材の開発が盛り上がっている。大手合繊メーカーから産地の小規模な企業まで注力し、意匠や風合いのバリエーションが充実してきた。天然繊維や無染色が中心だったかつてのエコブームと異なり、ブランド側も自分たちのテイストに合わせて素材を選べるようになっている。
海洋プラスチックごみ問題や地球温暖化で脚光を浴びているのが、合繊のリサイクル。ペットボトルや工場から出る廃プラスチックを繊維に再生する。最近では海洋プラスチックごみを活用する取り組みもある。新品の糸と同等の品質はもちろん、近年は紡糸や加工の技術で様々な太さや形状の糸が開発され、ファッション性や機能性の表現もしやすい。リサイクルポリエステルを使ったフェイクファーやスエードも誕生し、動物愛護の観点でも注目だ。
植物を原料にした化学繊維も改めて注目されている。レーヨン、キュプラ、トリアセテート、リヨセルがその代表。土の中で生分解されるため、廃棄物処理などの問題解決にもつながる。原料だけでなく、製造過程でも環境への負荷を減らす取り組みが進んでいる。
今後さらに、感性と環境配慮を両立した素材が増えれば、レディスブランドでの採用も加速しそうだ。
keyword.2 SHOP リアルショップ
ECやSNSの活用が当たり前となった今、改めて注目されているのがリアルショップの役割だ。ただ物を売る場ではなく、販売スタッフ一人ひとりの魅力を通じて、顧客がブランドに対して「好き」「楽しい」「信頼できる」と感じてもらう重要なタッチポイントとなっている。ECやSNSともうまく連携している店は、顧客との結び付きをさらに強固なものにしている。
ECとの協調で、販売員の新たな働き方を
販売スタッフがモデルとなって着用商品をおすすめする「スタッフコーディネートスナップ」が、ファンとブランド・実店舗のエンゲージメント(愛着心)を高めている。ブログ全盛期からスタッフ画像は注目されてきたが、今やデータを通じて販売スタッフ個々の「着想」や「伝える努力」も評価できるようになった。「実店舗・販売スタッフがECと協調・連携する」新しいモデルといえそうだ。
そのための注目のシステムの一つが、バニッシュスタンダード(東京)が開発した「スタッフスタート」だ。販売スタッフが撮影した画像を直営ECサイトやSNSへ簡単に投稿でき、商品データとのひも付けもスムーズに行える。この画像経由でECで購入されたときのスタッフの貢献を評価することで、やる気を引き出すことに成功している。
いち早く、各販売員スタッフの成果を所属店舗売り上げとして評価し、インセンティブ(成果報酬)制度も作ったバロックジャパンリミテッドでは、今まで参加していなかった多くのスタッフがスナップ製作に参加。販売意欲向上、全国のスタッフの能力開発も進み、ファッション販売職の新しい働き方が見え始めた。
このほか導入ブランド・企業の多くで、スタッフに憧れを抱いて「働きたい」と採用に応募する人材も現れている。
特別感を提供するブランドにとって、実店舗での体験や販売スタッフへの共感は、ファン作りに欠かせない要素。企業側の支援やインセンティブ制度など、スタッフの働くモチベーションを高める仕組み作りが重要になっている。
keyword.3 CREATION クリエイション
レディスファッションのカジュアル化が続いている。ここ1、2年でも女性のニーズや売れる服が大きく移り変わるなか、「フェミニンとは何か、自分たちのブランドは何を作るべきか」が改めて問われている。19年秋冬の各社の展示会を見ても、もともとのコンセプトへの原点回帰をしたり、あるいは時代に合わせてコンセプトを再定義するブランドが目立つ。
女性が変われば“フェミニン”も変わる
19年春夏も、リネンやカットソーのゆったりしたワンピースにリブレギンスなど、引き続きナチュラルでリラックスした服装がトレンドとなった。カジュアルが得意なブランドだけでなく、コンサバ寄りの客層が多く仕事着ニーズが高いブランドにも、このムードが広がっている。あるショップは、「仕事着のドレスコードが以前よりもゆるくなったことや、リネンなどの19年春夏のナチュラルなトレンドが後押しした」とみている。オン、オフの境い目はますます薄くなり、商業施設でも「着回し力の高い商品」をうまく提案するテナントが数字を伸ばしている。
レディスブランドのクリエイションにとって非常に大きなテーマである、“フェミニン”を再考する動きも出てきた。フェミニンエレガンス系を中心に、カジュアル要素を程よく取り入れて成果を出しているブランドもあれば、一度路線変更したが既存のファン離れを防ぐためにテイストや着丈を元に戻すブランドもあり方向性はさまざまだ。ひざ丈のフレアスカートにパンプスなどの定番のシルエットを好む女性も根強くいるため、ブランドに合った進化の度合いを慎重に探っている。
商品単品の開発だけでなくスタイリング提案もポイントだ。「シンプルでリラックスした楽な素材やシルエットだが、ヘルシーな肌見せやメタルのアクセサリーで女性らしさを出す」「甘めのワンピースをスポーティーなアウターで今っぽくアクティブにアレンジする」など、ブランドの軸を生かしつつも表現は多様化してきた。
社会全体としても、既成概念的な女性らしさを一度リセットして新しい時代のイメージを模索するムードが今はある。それがどこまで商品企画に影響するかはまた別の話だが、女性がどんな自分でありたいか、どんな生活を送りたいかによっても、フェミニンのイメージは変わる。「顧客が今は何を期待しているのか、自分たちのブランドを選ぶ意味は何か」に向き合い続ける先に、ブランドそれぞれの新しいフェミニンの表現が生まれるだろう。