シミ再発を予防する新たなアプローチにつながる可能性
ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:鶴岡 宏樹)は、2026年9月28日~10月1日にオーストラリア・パースで開催される第36回国際化粧品技術者会連盟(以下 IFSCC、補足資料5)世界大会において、シミの新しい改善アプローチにつながる研究成果を発表します。
研究の背景
シミの主な原因は、紫外線の刺激により、細胞を守るメラニン色素が過剰に作られることにあります。従来のシミケアは、メラニンを「作らせない」または「取り除く」ことが中心でした。しかし、シミが薄くなっても、ケアを止めると再びシミが現れることがあり、根本的な解決は難しいとされていました。一方、「日焼け」による黒化は、紫外線を防ぐことで自然と元に戻ることから、肌は本来、紫外線による色素沈着から回復する力を持つことが分かります。そこで、ポーラ化成工業では、長年多くの方のシミを観察する中で、シミが自然に薄くなるケースがあることに着目し、そのメカニズムを解明することで再発予防につながる知見を得ようと考えました。発表論文
『肌本来の回復力を解き放つ
~連続マイクロバイオプシーが明らかにした、DNA修復を介したシミ改善の新アプローチ~』
英文名: Unlocking Intrinsic Skin Recovery Potential: Serial Microbiopsy Sampling Reveals a Novel DNA Repair-Based Approach to Improving Solar Lentigines
発表者: 山地 史哉、中山 和紀、西條 拓、望月 麻友、河野 佐知子、楊 一幸(ポーラ化成工業)
船坂 陽子(池袋西口病院)

山地 史哉 研究員
発表内容概要
本研究では、同じシミ部分を継続的に調べられるマイクロバイオプシー技術(補足資料1)を用いて追跡調査を行いました。その結果、シミが自然に薄くなった肌では、「NEIL3」という遺伝子を中心とする、DNA修復の仕組みが活発に働いていることが分かりました(補足資料2)。さらに細胞実験により、DNAダメージが多いとメラニン取り込みが増えること(補足資料3)、またヒメフウロという植物の抽出物がNEIL3の働きを高めメラニン取り込みを抑制する(補足資料4)ことも突き止めました。これらの結果から、肌がDNAダメージ修復モードに入ると、シミを作ろうとする活動が自発的に停止する可能性がはじめて明らかになりました(図1)。

メラニンは、紫外線を遮る日傘として、DNAダメージを防ぐために作られると言われています。したがって、「DNAダメージ」が残っている限り、肌がメラニンを必要とするのだと解釈できます。つまり、シミ再発を防ぐにはメラニンへ働きかけるだけでは不十分で、DNAの修復にも目を向けることが重要と言えます。本研究は、生命に備わる仕組みに着目することで、新たなシミ改善アプローチにつながる可能性を開きました。
【補足資料1】 マイクロバイオプシーとポーラ化成工業での研究活用
マイクロバイオプシーは、注射針よりも細い直径250 µm程度の針を用いて、皮膚からごく少量の細胞を採取する手法です(図2)。従来の皮膚採取法である「パンチバイオプシー」は、局所麻酔後に直径2~4 mmの器具で皮膚を採取する方法で、負担が大きいことが課題でした。これに対しマイクロバイオプシーは、傷が極めて小さく回復も早いため、皮膚の色の変化と遺伝子の変化を同時に評価することが可能です。

ポーラ化成工業では、マイクロバイオプシーで採取した微小皮膚のRNAから全遺伝子の網羅的な遺伝子発現量を測定する手法を確立し、シミの研究を進めてきました(※1)。
※1 参考リリース
「個々のシミの形成要因を独自AIシステムにより推定可能に 『マイクロバイオプシー』とAI技術を融合 一人ひとりのシミの個別対策に前進」(2025年11月13日)
【補足資料2】 シミ部分におけるDNAダメージの蓄積とNEIL3について
シミの部位は、通常の肌に比べて紫外線などによる「DNAダメージ」を示す指標が慢性的に高いことが分かりました(図3)。シミは、単に周囲より色が濃いだけでなく内部の細胞がダメージを抱えた状態にあると考えられます。
本研究では、シミがある方の肌を対象に、20週間にわたる追跡調査を実施。中には自然とシミが薄くなった方もいましたが、意外なことにメラニンを作る遺伝子には変化が見られませんでした図 4A)。
そこでシミが薄くなった肌にだけ見られた特徴を洗い出すと、ダメージを負ったDNAを修復する遺伝子が活性化していることが分かりました(図4B)。その中で中心的な役割を果たしていたのが「NEIL3」です。このことから、シミの改善には、DNAダメージの修復力、NEIL3を起点としたメカニズムが重要であることが、今回はじめて分かりました。

【補足資料3】 NEIL3とメラニン蓄積の関係について
メラニンには、紫外線によるダメージから細胞の核を守る働きがあり、細胞は自らを守るためにメラニンを積極的に取り込む性質を持っています。DNAダメージとメラニン取り込みは密接に関わると考えられます。しかしNEIL3が表皮細胞のDNA修復に関連するのか、またNEIL3の量がメラニンの取り込みに影響するかは調べられていませんでした。そこで、培養した細胞を用いて、NEIL3を減らす処理を行ったところ、紫外線を浴びた後のDNA修復が遅れ(図5)、それに伴って細胞がメラニンを取り込む量が増えることが確認されました(図6)。反対に、DNA修復がしっかり進めば、細胞は自らを守るためにメラニンを取り込む必要がなくなると考えられます。

【補足資料4】 植物エキスによるNEIL3の活性化とメラニン取り込み抑制
さらにNEIL3の働きを高める成分の探索を行い、ヒメフウロエキスに、NEIL3の発現量を増加させ、細胞のメラニン取り込みを抑える効果があることを見出しました。この成分は肌の回復力を高め、シミの根本原因に働きかけることが期待されます。

【補足資料5】 IFSCCについて
IFSCC世界大会は、世界中の化粧品技術者・研究者にとって最も権威のある学会で、最先端の化粧品技術が披露されます。応募論文はIFSCCの厳正な審査を受け、選ばれたものだけに発表が許されます。企業プレスリリース詳細へ
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