株式会社アリミノ(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:田尾大介)は、美容施術や加齢によって生じる毛髪内部のタンパク質構造の損傷に対し、糖由来成分「ヒドロキシプロピルグルコナミド(HPG)」と「加水分解コーンスターチ(HCS)」を組み合わせることで、毛髪内部の異なる構造に同時にアプローチし、単独使用を上回る補修・強度改善効果が得られることを明らかにしました。本研究では、HPGが主に毛髪内部の非晶構造であるマトリックス(KAP)、HCSが結晶構造であるミクロフィブリル(IF)に作用することを確認。両成分の組み合わせにより、ダメージ毛の水中引張破断強度やタンパク質のα-ヘリックス構造の回復において、相乗効果が示唆されました。本研究成果は、2026年6月18日に開催された「2026年繊維学会年次大会」にて発表しました。
【研究の背景】
ヘアカラーやパーマなどの美容施術、また年齢を重ねるに伴い、毛髪内部のタンパク質構造は損傷します。こうした毛髪内部の変化は、髪の強度低下や切れ毛の原因となるだけでなく、まとまりやツヤなど、髪の見た目の美しさにも影響を及ぼします。
当社では加齢に伴う髪悩みに対して「頭皮環境の改善」と「毛髪内部の構造修復」の両面から科学的なアプローチを進めており、これまでに加齢に伴う髪質の低下に対し、「頭皮の慢性炎症に着目した頭皮環境からのアプローチ(※)」などを発表してまいりました。本研究では、毛髪内部の構造損傷に対し、毛髪内部のタンパク質構造の補修効果をさらに高める技術の確立を目指しました。
毛髪の大部分(約85~90%)を占める「コルテックス」は、主に以下の2つの構造で構成されています。
・ミクロフィブリル(以下IF):硬く、規則正しい結晶構造を持ち、髪のコシや強度に関わる
・マトリックス(以下KAP):ミクロフィブリルのすき間を埋め、髪の柔軟性や保水性に関わる
これら毛髪内部タンパク質に対して、これまでに糖由来成分である「ヒドロキシプロピルグルコナミド(以下HPG)」が高い毛髪補修効果を持つことを確認してきました。 そこで本研究では、さらなる毛髪構造修復効果の向上を目指し、新たに「加水分解コーンスターチ(以下HCS)」に着目。それぞれの成分が毛髪内部のどの構造に作用するのかを解析するとともに、両成分を組み合わせた際の相乗効果を検証しました。
※https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000069.000048139.html

図1:毛髪の構造
【研究成果1】作用部位の解析
High-Pressure DSC(HPDSC)を用い、各成分が毛髪内部のどの構造に作用しているかを評価しました。
・HCSの作用:HCS処理により、IF中のヘリックス量や構造完全性の指標であるピーク面積(ΔH)が上昇傾向を示しました。これは、HCSが主に結晶構造であるIFに作用し、その規則構造の修復をしていることを示唆しています。
・HPGの作用:HPG処理により、KAPの架橋密度の指標であるピークトップ温度(Tp)が大幅に上昇し、結晶の融解を抑制する傾向を示しました。これは、HPGが主に非晶構造であるKAPの修復をし、IF構造の保持効果を発揮していることを示唆しています。

図2:HPDSC測定結果
【研究成果2】毛髪強度回復効果の評価
水の影響を受けにくいIFネットワークの力学特性を強く反映する「水中引張試験」を実施しました。ブリーチによるダメージ処理毛に対し、HPG単独あるいはHCS単独の処理では、引張応力の明確な回復は確認されませんでした。しかし、両成分を組み合わせた処理を施した毛髪では、未処理毛や単独処理毛と比較して水中での引張破断強度を有意に回復させることが確認されました。これは、異なる作用点(IFとKAP)へ同時にアプローチすることで相乗的な補修効果が得られた為と考えられます。

図3:水中引張破断応力
【研究成果3】タンパク質構造比率の評価
毛髪タンパク質の二次構造を分子レベルで評価するため、固体NMR測定を行いました。HPG単独、HCS単独のいずれの処理においても、ダメージによって減少していたα-ヘリックス構造の割合が回復することが確認されました。さらに、両成分の組み合わせ処理においては、単独処理と比較してα-ヘリックス構造の回復量が増加傾向にあり、構造レベルでも高い相乗効果が得られることが示唆されました。

表1:毛髪タンパク質 構造比率
【まとめ】
●加水分解コーンスターチ(HCS):毛髪周囲または内部で相互作用し、結晶構造の修復を促進することで、ミクロフィブリル(IF)の規則構造を修復します。
●ヒドロキシプロピルグルコナミド(HPG):毛髪周囲または内部で相互作用し、マトリックス(KAP)の修復を促進しつつ、ミクロフィブリル(IF)間のすき間へ充填されます。
このように、ミクロフィブリル(IF)とマトリックス(KAP)という毛髪内部の異なる立体構造へ同時にアプローチすることで、単独では成し得なかった高い毛髪補修・強度改善効果が発揮されます。

図4:本研究成果のイメージ図
【今後の展望】
本研究により、作用部位の異なる2つの糖由来成分(HPGとHCS)を組み合わせることで、毛髪内部の結晶構造と非晶構造の双方に対して、相乗的な補修および強度改善効果が得られることが明らかになりました。髪の芯を支える硬い背骨のようなミクロフィブリルと、それを包み込み、しなやかさや保水性に関わるマトリックス。この2つの構造が健やかに保たれていることが、美しく強い髪の条件の一つであると考えています。今回得られた「異なる作用点へのダブルアプローチによる相乗効果」の知見を生かし、今後は、美容施術による深刻なハイダメージ毛だけでなく、加齢に伴う毛髪内部のタンパク質損傷が進んだエイジング毛など、幅広い髪の悩みに対応するヘアケア製品の開発につなげてまいります。高い補修効果と持続性を兼ね備えた、新たなヘアケア技術の確立を目指します。
【学会発表】
発表会:2026年繊維学会年次大会
発表タイトル:糖由来成分による毛髪に対する効果について
発表日:2026年6月18日
【用語解説】
ミクロフィブリル(IF):アミノ酸がつながった「α-ヘリックス」というらせん状のケラチンが、規則正しく何本も束ねられてできた構造。結晶構造を持ち、硬く弾力性があるため、髪のコシや強度に関わる。
マトリックス(KAP):ミクロフィブリル同士のすき間を埋める非結晶性のタンパク質。水分を抱え込む親水性を持ち、髪の柔軟性や保水性に関わる。
α-ヘリックス:毛髪の主成分であるタンパク質の立体構造の一種。アミノ酸がつながった鎖が、右回りのらせん状にねじれた構造。このα-ヘリックスが集まって円筒状に並ぶことで、ミクロフィブリルが形成される。
■ 株式会社アリミノ https://www.arimino.co.jp/
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